winter rose (ページ20)

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Ten 1 ページ20

突然リビングのドアが空いた音がしてすぐに声が聞こえた。

「A！！」

『テン…？』

「あ…良かった…生きてた…」

『死なないよ別に…』

「…別れ…たの？」

『…もうね、清々したよ』

「そっか…なんか…ごめんね…？」

『なんでよ…テンのおかげであの人が浮気してること知れたんだし…ありがとう』

「僕が見つけなければよかったんじゃないかって思って…」

『テンが見たって証拠があるのに、浮気なんてしてないだなんて言うんだよ…テンが見つけてくれてよかったって思った』

「でも…毎回そうな気がして…」

『テンは私と神様の間の連絡係みたい。お告げを伝えてくれる人』

「伝道師」

『そんな感じ』

小学校から大学までずっと一緒で、就職して別々になってからも、毎日のように会っているテン。

そんなテンは私の彼氏の浮気現場によく遭遇する。

彼氏と、お互い愛し合っていると思ってたのは私だけだった。

別れ際によく言われる言葉がある。

「テンって奴はなんなんだよ…？」

って。
テンはただの幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもないよって、何回も言ったのに。

だから浮気したの？って聞いたら

浮気なんてしてないって。

皆が言う。

『もう…彼氏とか疲れちゃった』

「…え…？」

『テンがいるから、もういいかなって』

「僕彼女いるよ…？」

『テンは彼女と私どっちが好き？』

「それは…」

『知ってるんだよ、全部』

「全部？」

『テンは私のことが好きだってこと』

そう言ったらアハハって笑って、

「すごい自信だね」

って。

他にもたくさんあるよ。

『今までの彼氏が浮気してるの見たってのはテンの嘘なのも…知ってた』

さっきまで笑っていたテンの目線が下がっていく。

「僕おかしいんだ。Aが彼氏と別れて傷付いて、僕に依存して僕から離れられなくなればいいって思うんだ」

オロオロして、不安で押し潰されそうに弱っていく。

『おかしくないよ…テンからの愛の方が居心地いいもん』

そう言うと、

ほんと？って泣きながら聞いてくるから、

小さく頷いてみせると、テンは私を強く抱きしめた。

「やっと…僕のものだ」

泣き疲れて私の膝で寝てしまったテンの髪を撫でる

[テンなしではいられない私]にテンがどんどん溺れていけばいいと思ったのはいつからだろう。

テンだけの私

私だけのテン

もっと私なしではだめになってほしいと思う。

もっと私だけを愛して。

もっと

私に溺れて狂っていけばいい