Psycho-2 (ページ43)

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アルバイトは見た！ページ43

「失礼します」

日曜日の午後3時あたり、師匠が今日はもう客が来る予感がしないと言い切り早めの閉店を決断したそのタイミング、廊下の方からなにやらピリッとした不穏な気配を感じ咄嗟にドアの方へ顔を向けた僕に驚いた師匠が「どうした、モブ」とかけた声を遮るようにしてその男の人は来た

一見ニコニコしていてとても人当たりが良さそうだが、なにやら只者ではないと確信させられるオーラを発するその人に、僕はその時から無意識に警戒態勢を取っていたらしい

「あ、あんたは昨日の…」
「はい、昨日ぶりで」

師匠の知り合いらしいその男は何かに気づいたようにこちらを向くと苦笑し、「そんなに警戒しないでください」と優しげな声色で僕に話しかけた

「あの後無事仕事の方は済みましたか？」
「あぁ…まあ、おかげさまで」

昨日、そして仕事という単語から師匠が昨日一人でホテルの除霊に行っていたこと思い出す
ならこの人はホテル関係者の依頼人だろうか？確かに服装も型にはまったしっかりしたものだ

しかしこの雰囲気と師匠の対応からして、どうにもそんな普通の用事でここへ来た人ではないような気がする

「で、いったい何の用だ。うちはこう見えてもあんまり暇じゃないんだが」

嘘。たった今だって暇すぎて早めに帰ろうとしていた…なんて茶々はもちろん言わない
そもそも僕は元々あまり口数の多い方ではないし、それに師匠は間違いなくこの人がこの場にいることを快く思っていない
現に相談所の空気は重く、気軽に言葉を口にできる場ではなかった

「まあそう邪険にしないでください」

そんな中この人は気分を悪くしたりする素振りも見せず、変わらず和やかな口調で師匠に言う
怖いお客さんに師匠が罵声を飛ばされながら笑顔で対応しているのは何度か見たことがあるが、その態度が今回はいつもの逆だ。僕も少し驚く

「いい話を持ってきたんですよ」
「いい話だ？」
「双方にとって利益になる話です」

はっ、と師匠が馬鹿にしたように笑う

「うまい儲け話ねぇ、言っておくが俺は簡単に詐欺にひっかかる間抜けじゃないんでね。他所をあたった方がいいぜ」
「とにかく話だけでも聞いてくださいよ」

それにしてもこの人の話し方、僕はどうも好きになれない
敬語というのは本来相手を敬って使うものであるが、どうもこの人の敬語はそうでない
そんな気配は微塵も感じられず、なんなら見下されている気がするほどだ

「持って来てください」