Psycho-2 (ページ37)

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さたでーないと6 ページ37

やっとひと仕事終え、自分の着ているボーイの制服を見下ろすと、Yシャツは煤で真っ黒になっていた

今回の怪奇現象の原因はネズミだった
恐らくクビにされたシェフが逆恨みでこのビルに離したのだろう

(あと2,3日経てば、ここの支配人も原因に気付いただろうな
せっかちな支配人のおかげで俺に仕事が入ったわけだ、感謝しよ)

それにしても、ネズミ捕獲トラップをこのビルの至るところに設置したためなのだが、この有り様はひどい

このまま、あの品のあるレストランに戻るわけにもいかない

途方に暮れていると、突然後ろから俺の名前を呼ぶ声がした

振り返るとそこには俺の顔を見るなり、表情を明るくさせたAがいた

「やっぱり霊幻さんだわ！
…ってどうしたんですか？そんなに汚れて」

「あー…
除霊作業にちょっと手間取ってな」

粧し込んで綺麗なAの手前、あまりにも情けない自分の格好に恥ずかしくなり思わず目線を背けた

「ちょっと顔貸してくださいね」

Aはそう言いながらするするとドレスに合わせた手袋の片方を外すと
手袋をつけてない手を俺の顔に添えて、もう一方の手に持った手袋で顔を拭き始めた

「っA、手袋汚れるぞ！？」

「洗えばいいんですよ
…それよりなかなか落ちませんね、これ」

良い生地だからだろう、Aが力を入れても全く痛くない

「ところで…その格好どうしたんだ」

「プレゼントしてもらったんです」

手を止めることなくAが答える

(デート服からプレゼントか…金持ちはやることが違うな)

きっとこの手袋だけで今回の依頼料に匹敵するのだろうな、などと考えているとますます惨めな気分になってくる

「いいのか？
そんないい男放っておいて」

「…」

しばらくの間沈黙が流れ、Aが俺の顔を拭く時の布の擦れる音だけが、この重い空気を震わせる

いくらなんでも卑屈になり過ぎたか…？、と恐る恐る俺がAの目を見るのと同じタイミングで

「…もし、今日一緒にいたのが霊幻さんだったら
きっと何があっても私は離れなかったです」

とAが相変わらず手を止めることなく言った

(それってつまり、下手に意訳せずに素直に言葉の意味をとると…)

久しぶりに鼓動が早くなる

何か言おうと口を開きかけた時、唐突にAの手が俺の顔から離れた

「さ、だいぶマシになりましたよ」

「え、あ…ありがとよ」

結局Aの真意を確かめることはできず、話は終わってしまった