Psycho-2 (ページ29)

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さたでーないと2 ページ29

「スープできてる！？」

「あと5分！」

「霊幻さん、8番テーブルのオーダーお願い！」

「はい、ただいま！」

ホールの優雅さとは裏腹に、ちょうど込み合う今の時間帯の厨房は戦争状態だ
このピリピリした雰囲気は、会社の納期間近のそれを彷彿とさせる

(結局職場なんてどれも同じってことか)

あー、やだやだ、と軽く頭を振りながら厨房とホールを仕切るドアを開けると、たった今来たアベックの客が入口で何かボーイに伝えているところだった

(まーたアベックかよ、金持ちってのは気楽でいいよなー)

ふと、そのアベックの女にはどこか見覚えがあることに気付く

(……あれ

A？？！！！！！)

咄嗟に観葉植物の影に隠れる

(で、でいと…？)

どきどきいう心臓を押さえて頭の中を整理する
ドレスを着ているためいつもと雰囲気が違い、すぐにはわからなかったが、あれは間違いなくAだ

(隣にいた黒スーツの男は…彼氏なのか？)

ちらっと観葉植物の影から顔を覗かせると、ボーイに案内された席まで黒スーツに肩を抱かれながら歩いているAが見えた

(ああああｯ！？
誰の許可取ってAの体に触ってんだよ！！！)

がびーん、と全身に衝撃が走る
今すぐにでも出て行きたいが生憎今は仕事中であり、俺はボーイであの男は客だ
こんな状況下で男に物申すのは非常によろしくない

(くっ、もどかしい…)

「ちょっと霊幻さんこんなとこで何やってんの、早くオーダー取ってください！」

「は、はいただいまー！」

他のボーイにそう小声で注意されたことで我に返った
そもそもAが誰とデートしようが俺には関係ないことで、今はさっさと依頼をこなすことが最優先なのだ

…と、頭ではわかっていてもなかなか視線がふたりから離せない

(なんだろ…偶然娘のデートを目撃しちゃった父親の気分…なのか？)

「霊幻さん、あんたなにトレイで顔隠しながらこそこそ移動してるの」

「いえ、あの…これには深い訳が」

(大丈夫か、こいつ…)

(あぁっ！？！！！
手なんか握ってんじゃねーよスーツ野郎！！Aも簡単に男に触らせちゃダメだろ！？逃げろA、その男から逃げろーー！)