Psycho-2 (ページ21)

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トラかウマかトラウマか 3 ページ21

「止めなさい、ショウ！」

振り上げた腕の下からキッとAに睨まれる

いくらAにそう言われようとも、助かったとでもいうように半笑いを浮かべ反省の色が見えない男を見ると
どうしても最低でも2,3発殴らないと気がすまないほどの怒りがこみ上げてくる

「…なんでこんな奴庇うんだよ！！！！！」

頭に血がのぼってしまったせいで冷静になることもできず、矛先を失った怒りをぶつけるかのごとくAに声を荒らげる

「違う
私はこんな人庇ってないわ」

Aが掴んだ俺の手をゆっくり下ろしながら言う

「…ただショウにこんな汚い大人に流されてほしくないだけ」

じっと俺の目を見ながらAは優しく諭すように語りかけた

Aのその目を見ると、さっきまでの複雑な感情が嘘のように消えて、真っ白になった頭にはただ唯一「安心感」だけが残る

堰を切ったように涙が流れた

「やだ、ちょっとショウ泣かないでよ！？
…ハ、ハンカチハンカチ！」

さっきの落ち着きはどこへ行ったのか、あたふたしているAの横をすり抜け島崎がテーブルの上にあった紙ナプキンを渡してきた

「はい、」

「……ん」

ひとり余裕の島崎になんだか納得いかないような気もするが、とりあえずここは素直に渡された紙ナプキンを受け取った

制服姿の盗撮だけならまだしも、着替え中の盗撮など許されるはずがなく、当然男は警察に突き出すことにした

「てめぇ逃げようなんて考えてねぇだろーな
指の2,3本じゃすまねーぞ」

「ひいぃｯｯ！？！！」

あまりにも情けない声を上げる男に呆れて溜息が出る

落ち着いて考えれば、子供の脅しに本気でびびるような奴相手にあの時の俺はどうかしていた

(俺もまだまだガキだなー)

そんなことを考えていると、ふとあることに気づいた

(そういえばさっきから島崎が見当たらねーな)

Aは着替えに奥に行ったが、その後気がつけば島崎まで居なくなっている

(…ま、便所だろーな)

退屈さに、警察が来るのを怯えて待っている男を尻目に大きなあくびをひとつした