うつくしいひと ページ7
広い邸を歩き回るには、彼の衰弱した身体ではかなりの時間を要してしまった。
結局あの人影は見当たらず、既にこの邸を出たか大広間の人混みに紛れたかしか考えられない。……パーティで大勢の人が舞踏真っ只中の場所に入るのは彼も躊躇したい所だったが、何か胸騒ぎの様な心のざわめき＿＿＿＿勘とでも表現した方が良いのだろうか＿＿＿＿を感じ取り、そうも言ってはいられない様子であった。
がちゃり。
見張りの者に大扉を開けさせ、重厚な装飾が施されたその向こうから溢れ出す煌びやかな光、音の急流に眉を潜める。嗚呼、今日はこんな場所に顔を出すつもりなどなかったのに。……そんな考えを滲ませた表情は厳しいものだった。
一応礼服を着ておいて正解だったな、と、次に考えたのだろう。プリムローズの名が落ちるというのもあまり面白くない気がしたので、元々甘い造形の顔に笑みを貼り付けて公に一礼する。誰だろうか、という視線を一斉に受けながらに。
「其処に御見えになられたのは……プリムローズ公爵家長男、ノエル様。ノエル様です」
今晩の司会を務めているのであろう。彼の父親の傍で声を上げている男は禿げ面を隠すための鬘をしており、それが遠目から見ても一目瞭然なものだからつい吹き出してしまいそうになった。
「父様も注意してやれば良いものを……」
恐らく本人は気付いていないのであろう鬘の違和感に、思わずそんな呟きが溢れる。だがそうしていられるのも瞬きの間程に短かったもので。
「もし宜しければ私と」
「次のワルツは是非私と踊ってくださいまし」
「この後ワインを御一緒に」
彼が一歩人々へ近付いた所に、それを見ていた女性らが殺到する。一つ一つを丁寧に断ることが非常に面倒であったために笑顔で端的な返事を心がけていたが、とうとう彼女らの執念というものに困り果ててしまった。
これではあの人影を探すどころか、まともに動けやしない。
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Ria - え、えええええ！？コメントありがとうございます、初めて頂きました……！！！ 実は長い間お恥ずかしながら受験で手をつけられず更新できなかったのですが、また再会しようかと……！！！！ 本当にコメントありがとうございます、励みになります！ (2021年4月29日 2時) (
レス) id: 092f049eaf (このIDを非表示/違反報告)
希望 - はじめまして！希望です！ダークファンタジーという素敵な雰囲気もあってとても良かったです！面白かったです！ (2021年2月6日 21時) (携帯から) (レス) id: ca4204c2d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ria | 作成日時：2021年1月31日 21時
