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そうか。そうだよな。
それが”動機”。
でも、きっともっと前から兆候があったはずで、そして俺も
いたかもしれないんだ。
やっぱりAに会いに来てよかったと思った。
こいつがあまりに泣くから、俺は逆に冷静に物事を考えられる。
そして思った。
俺だけが強くても仕方がないのだと。
五条「Aは、俺に救われる準備があったから今こうしてるんだもんな」
「え?」
ボソ、と聞こえないように呟いた。
Aを強くする。そして守る。このクソみたいな呪術師界をリセットする。
そのためには、この出来事をAに語らなくてはならない。
五条「1年くらい、前かな。救えなかった女の子がいるんだけどさ」
「1年前…」
五条「宗教団体と任務で関わった。女の子には懸賞金がかかってて、俺と傑は彼女を守ることができなかった」
忘れたくても忘れられない出来事。
禪院甚爾との死闘の末、一度死にかけて俺の術式は完成により近いものになった。
でも、天内理子を守ることはできず、彼女は死んだ。
その死体を持ち帰る時の、一般教徒たちの不気味な笑み。
五条「皆殺しにしてやろうと思ったね」
「でも、しなかったんでしょ…?」
五条「止めたのは傑だ。止めてくれなければ、やってたかもしんねえなぁ」
「傑さんが…」
傑は”意味”を大切にしていた。
あの宗教団体の教徒たちを殺すことに”意味”はないのだと。
五条「でも、傑が苦しくなったんだろうなぁ。あの日から。誰のために自分が戦えばいいのか分からなくなったんだろ」
呪術師は選ばれた存在で。
そう言い聞かされた俺たちは、呪霊を祓って、祓って、祓いまくる。
それだけの日々に、”意味”を求める傑が苦しくなるのは至極当然とも言える。
五条「―――兆候は、あったはずだ…!俺がっ…気づけなかった…!!!」
テーブルにどうしようもない怒りをぶつける。
Aは驚きもせず、俺の手を握った。
「違うよ、先生…それは違う」
五条「違くない。最近痩せたこととか。灰原が死んだ後とか。俺たちはお互いの任務が忙しくて話せてもいなかった」
「それは先生のせいじゃないでしょ?…さっき言ってたじゃないですか。『救われる準備』の話」
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作者名:佐々 | 作成日時:2021年1月20日 13時