100m5秒 ページ32
白馬の眠り姫を追い掛け、走ること数分。
漸く海辺で何をするともなく小雪と共に佇むAが見え、蘭丸は息を切らして立ち止まる。
蘭丸(や、やっと追いついた……)
思わず膝に手を付く。城からここまで、遠い訳ではないが近い訳でもない。
ただ、単位としてはキロメートルである、そしてそれを百メートル五秒程のスピードで走った、ということだけ。
早速人間ではない。
蘭丸「はあっ…はあ……っ」
「……なんでいるの？」
蘭丸「あ、巫女っ、殿…」
必死に息を整えていると、眉を潜めたAが小雪を連れてこちらへとやって来る。
蘭丸「私が、はあっ…巫女殿に、お話したいことがあったことと……。
夜分に一人で外に出ては、式神が現われた時に、危険だとっ、思いましてっ……」
「追いかけてきたの？」
蘭丸「は、い。ここまでっ、走って……」
「……」
Aは農民２が自身を見た時のように、自分とは別の生き物でも見るような目を蘭丸に向ける。
馬とほぼ並走。
しかも男とは言え、自分と年が近いこの少年が……。
ひょっとしたら、晋作よりも体力があるのではないだろうか。
蘭丸「巫女殿は、随分馬に乗り慣れているようですが。
あまり人に懐かない小雪もA殿にはよく懐いていますし」
若干まだ息を切らしているが、ほとんど整っている。
その回復力に内心戦きながらも、Aは自分の隣に寄り添う小雪の首を撫でて言った。
「乗馬、やらされてたから」
蘭丸「乗馬……」
「習いごと。家が結構、金持ちだったから。週に二、三回やらされてたの」
どうやらAの世界で乗馬とは、高所得階層の人間のみが許される遊戯らしい。
……高所得階層。
確かにAは、気怠げな雰囲気を出している割にはやけに姿勢が良い。鈴藤祭、神輿の中で正座をしたまま綺麗な姿勢を保てていたのもそのせいだろう。
箸もきちんと使えているし。
「この馬は、従順で大人しいね。すごく使いやすい」
蘭丸「……」
余程気に入られているのか、小雪は「もっと撫でろ」と言わんばかりにAの手にぐいぐいと顔を押しつけている。
普段の気だるげな雰囲気は無く、ただ無表情で小雪を撫でるA。
漆黒の海を背景に月の光に照らされるその姿は、何故だかとても儚いものに見えて――。
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ささかま(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございました。不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。以後、気をつけます。 (2019年9月21日 17時) (
レス) id: b0b2c550c2 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下の注意をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年9月21日 17時) (レス) id: 1e7c2ecc39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ささかま | 作成日時：2019年9月21日 17時
