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忠義 ページ28

「……」

蘭丸「巫女殿……」


彼女が、何か言ったのだろうか。農民達の心を動かすようなことを。

濁った赤を見つめ、土に刺さった鍬を支えに乱れた息を整える。
Aの姿に気を取られ、耕す手が止まっていたその時。
後から畑に入ってきたらしい誰かが、蘭丸の手から鍬を取り上げた。





村長「……貸してくだされ」

蘭丸「村長……!」

驚く蘭丸を背後に、村長はおもむろに鍬を振り上げる。


ザクッ。

勢い良く地面に振り下ろされた鍬は、しっかりと土を耕す。






村長「……」

村長は数度、慣れた手つきで鍬を振るう。
立ち尽くす蘭丸と晋作達、そして村の長の登場によって作業を中断した農民達が様子を見守る中、村長はやがてその手を止める。





村長「とても良いものを頂いたのですね、ワシらは……」

蘭丸「え?」

まるで独り言のように呟く。
村長は、周囲の農民達をぐるりと見回して続けた。




村長「この土地は、木の根が蔓延り今まで耕すことすらできなかった。しかし――」

視線が畑に向かう。
木の根に邪魔をされつつも、信長から贈られた鍬は確かに土を掘り起こしていた。



村長「上等な鉄……こんなに質の良いものを、惜しげもなく与えてくださった。きっと、どんな荒れた土地でもこの鍬があれば耕していける」

村長は、再び鍬を振り下ろす。




村長「耕せとおっしゃるのですね。あの方は……。
太陽が昇らなくとも、諦めるなと……」

蘭丸「村長……」


村長「ワシらは、すっかり聞く耳をなくしていた。太陽が昇らなくなったことばかりに気を取られて……。
信長様がどんな思いでこの鍬を与えてくださったのか、考えることもせず……。

蘭丸殿、身をもって教えてくださったのですね」


ザクッ。
一等気持ちの良い音と共に、木の根が絶たれた。





蘭丸「……っ」

村長の言葉に打ち震える蘭丸。
笑みを浮かべた晋作が、肩を軽く叩く。




晋作「……いい顔してんな」

人々を顎で指してそう言う。
村長に続けて鍬を振るう農民達の顔は、皆笑顔に溢れていた。






村長「それにしても、信長様はこれだけの鉄を一体どうやって……」

耕しながら、村長は不思議そうに呟く。その疑問に、丁度隣で一心不乱に鍬を振り下ろしていた農民2が反応した。

理解の範疇→←鍬



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ささかま(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございました。不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。以後、気をつけます。 (2019年9月21日 17時) (レス) id: b0b2c550c2 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下の注意をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年9月21日 17時) (レス) id: 1e7c2ecc39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ささかま | 作成日時:2019年9月21日 17時

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