鍬 ページ27
農民2「なんだよ!
驚かせんな!」
「あの鉄。どこから来たと思う?」
農民2「はあ?」
脈絡の無い質問に、農民2は訝しげな顔をする。
農民2「鉄って……」
「あの鍬の鉄。信長サマからおくられた鍬」
農民2「知るかよ。
どうせ他の村のやつら働かせて手に入れたんだろ」
「……」
じっと濁った目で農民2を見つめるA。その瞳に農民2は、う"っと体を引く。
子供のような、真っ直ぐで純粋で透き通った色からは程遠いのに。
……まるで嘘やプライドを全て見透かされているかのような。
そんな気分にさせられる。
農民2「い、言いたいことがあるならさっさと言えよ!
気持ちわりい!」
視線を逸らせないままそう吠える。その様子をじっと見据え……Aは無表情で、ゆっくりと口を開く。
「あの鉄は、鉄砲を溶かして作ったものだよ」
農民2「……は?」
農民2が固まる。
鉄砲を溶かして?
嘘だ。鉄砲を溶かすなんて。
あの信長様が、そんなことをするはずがない。だって、信長様は俺達のことなんかどうでも良くて、船やら何やらで贅沢してて――。
衝撃の発言に、農民2のみならず、近くの他の農民達もAの方を振り返る。
農民5「どういうことだ姉ちゃん?」
農民6「鉄砲を溶かすって……。織田の繁栄は、鉄砲あってこそとか言われるぐれえだぞ?それを、農具にしただと?」
Aに詰め寄る農民達。
そのままの意味だけどなぁ。
Aは面倒そうに溜息をつき、やる気のない声で説明を始めた。
「このあたりはあんまり鉄も採れないって聞いた。
でも、あの鍬の鉄は上等。鉄砲に使われる鉄は最上級品。
それと、この前の模擬戦。一丁も鉄砲が使われてなかった。
……そういうことでしょ」
「「……」」
農民達は、驚愕の色と共に一斉に顔を見合わせる。
――信長様、鉄砲を農具にしてまで俺達のために。
Aによって告げられた事実が心の琴線に触れたのか、農民達は一人、また一人と畑の方へ駆けていく。
放置されていた鍬を手に畑に入ると、唖然とする蘭丸達を気にも止めず、慣れた手つきで畑を耕し始めた。
イナバ「おお〜っ!?」
蘭丸「これは一体……」
先程まで遠巻きに此方を見ているだけだった農民達の変わり様に、思わず手を止め周囲を見回す。
すると、畑に入らないままこちらをじっと見つめる姿が一つ。
15人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ささかま(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございました。不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。以後、気をつけます。 (2019年9月21日 17時) (レス) id: b0b2c550c2 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下の注意をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年9月21日 17時) (レス) id: 1e7c2ecc39 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ささかま | 作成日時:2019年9月21日 17時