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寂れた農村 ページ22

城への道中、静かな村に差し掛かり――。
Aはふとした違和感を覚え、立ち止まる。




「……?」

見ると、畑で働く人の姿はなく、道端で何人もの農民達が肩を寄せていた。




晋作「アイツら何やってんだ?」

Aに続いて晋作が足を止める。枯れ草で覆われた畑には、農具が寂しく放置されている。




(ストライキ……?)

晋作「耕さなくていいのか、あれ」

イナバ「分かんないなら聞いてみようぜ!
おーい、何してんだ?」

晋作の肩から物怖じしないイナバが声を掛けると、農民達は一斉に此方に視線を向けた。
濁った目で成されるその視線は、晋作の隣に立つ蘭丸へ。





農民1「……蘭丸様だ」

農民2「信長様のお小姓様が何の用だか」

蘭丸「…………」

農民3「見回りにでも来たんですか?」

敵意を含んだその声は、こちらまではっきりと届く。




農民1「畑を耕したって何の意味もないんだ。太陽も昇らないし、どうせ育たなねえ」

農民2「まったく、船なんて造って何になるんだ。
ばかばかしい!」

蘭丸「……っ」

蘭丸から距離が離れているAにも、彼が拳を握り、静かに息を吸うのが分かった。





(あの母親と同じだ。不満の捌け口を探してる……)

結局人間誰も同じだな、と農民達とそう変わらない濁り具合の目をする。
隣で晴明が「……人は、悲しい生き物ですね」と呟いて。


――その時。









【――キイィィィィィイイ――】


(……あ、来る)


耳を押さえ音の方を見ると、農民達のすぐ後ろで黒い靄が渦巻いている。
何を恨んでいるのか、取り囲むように大量に。





「……農民の周り。
囲むみたいに、来るよ」

蘭丸「っ!」

ぼそりと呟いたAの声に、いち早く反応したのは蘭丸。


無礼討ちとして斬られると勘違いした農民達が悲鳴を上げて逃げ惑う中、蘭丸の剣筋はぶれることなく式神だけを切り裂く。

晋作が雷なら、蘭丸は冬の朝の目が覚めるような冷たさを含む、凜とした響き。




農民1「うぁぁあ!?」

農民3「逃げろ!神隠しされちまう!!」

今更式神に気がついたのか、農民達の悲鳴が本格的な恐怖を交えて大きくなる。





農民2「ひっ……!」

蘭丸「!」

一人逃げ遅れた農民に、半分面が完成している成りかけが襲いかかった。
黒い闇が触れる寸前、蘭丸は素早い身のこなしで農民と成りかけの間に滑り込む。





蘭丸「逃げなさい!」

刀に鮮やかな火花を立てて成りかけを退けた後、農民を庇うようにして前に出た。

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ささかま(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございました。不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。以後、気をつけます。 (2019年9月21日 17時) (レス) id: b0b2c550c2 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下の注意をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年9月21日 17時) (レス) id: 1e7c2ecc39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ささかま | 作成日時:2019年9月21日 17時

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