意に沿わず ページ18
蘭丸「竹筒に冷やした茶を入れて参りました。
皆の傷薬もございます」
Aの心配とも言えないような心配を他所に、蘭丸が風呂敷を解こうとする。案の定、信長は手でそれを制した。
信長「……蘭丸」
蘭丸「はいっ！」
無邪気に返事をする蘭丸。
信長は、まだ若いその小姓に冷たい目を向けた。
信長「お前は何をしている」
蘭丸「え……？」
信長「心は決まったのか？」
蘭丸「信長、様……」
蘭丸は、すがるような眼差しを信長に向ける。
蘭丸「……私では、お役に立てないのでしょうか。
もう、お傍に置いて頂けないのでしょうか……！」
信長「……」
蘭丸は割れる寸前の、悲痛な声を上げる。信長は真意の見えない目で蘭丸の姿を一瞥し、そして――。
信長「……お前は何も分かっていない」
背を向け、船の方へと戻っていってしまった。
蘭丸「……っ」
晋作「おい！」
蘭丸は、風呂敷を晋作に押し付け駆け出す。その背中に向かって晋作が大声で怒鳴るが、立ち止まる様子はない。
イナバ「待てよ蘭丸〜！」
晋作「ちっ、追いかけるぞ！」
＊
A達は蘭丸を追い、小さな入り江へと辿り着いた。
さり、と砂を踏む音に気づき、波打ち際にしゃがみ込んでいた蘭丸が、ゆっくりと顔を上げる。
蘭丸「皆さん…」
「……」
イナバ「蘭丸、大丈夫か〜？」
蘭丸「すみません……。
恥ずかしい所をお見せしてしまいました」
心配そうな顔をしたイナバを見て、口元だけで笑って見せる。
蘭丸「……」
……波の音が打ち返す中、蘭丸はふと海の彼方に視線を向け、ぽつりぽつりと語り始める。
蘭丸「信長様には…幼き頃からお仕えして参りました。
ですので、信長様のお言葉の真意までは理解できずとも……お気持ちには、常に寄り添ってきたつもりです」
「……」
蘭丸「このように、お気持ちが分からなくなったことは初めてで……」
晋作「蘭丸……」
俯く蘭丸に、晋作が遠慮がちに声を掛ける。
蘭丸「……余計なことを言いました。忘れてください」
蘭丸は、A達に向かって深々と頭を下げた。
蘭丸「……ご迷惑をおかけしました」
絞り出した声は酷く頼りない。
Aは捨てられた子犬のようなその姿に、面倒そうにぽつりと呟く。
「……森くんのそれは、盲信でしょ」
蘭丸「っ！？」
気だるげな一言に、蘭丸は勢い良く顔を上げる。
その目は、戸惑いと懐疑の色を含んでいた。
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ささかま(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございました。不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。以後、気をつけます。 (2019年9月21日 17時) (
レス) id: b0b2c550c2 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下の注意をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年9月21日 17時) (レス) id: 1e7c2ecc39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ささかま | 作成日時：2019年9月21日 17時
