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ステージ中、時間の感覚が狂っていたように思えた。
出番を終えぞろぞろと戻るメンバー達は、スタッフと共にタオルや水分を受け取りつつ控え室へと帰って来る。
その時までにはどうにか私は落ち着きを取り戻し、いつかのように、私は少し先に控え室に戻っていた。
誰にも、あんな顔は見せられない。
ましてや、ジミンに見られでもしたら……。
はあ、と深い溜息を漏らす。
そうこうしている内に、メンバー達とスタッフが帰ってきた。
お疲れ様、と各々挨拶や会話を交えつつ、潔く今日のスケジュールを終えた為に片付けや帰り支度を各自始める。
私自身もメイク道具等を着々と片付けていくと、――ねえA――、と、何処か焦った様子でジミンが駆け寄ってきた。
「A。探したのに、先に戻ってたんだ?」
「うん、ちょっと忘れ物しちゃって。ごめんね、心配掛けたかな」
ううん、と小さく首を左右に振るジミン。
今度は衣装のポケットに手を差し入れ携帯端末を取り出し、慣れた手つきで操作した後、カトクの画面を私に見せてきた。
カトク?どうしたのだろうか……。
思わず不思議とばかりに首を傾げてしまう。
「ほら、何だかんだ連絡先も知らなかったからさ。これを機に良かったら、って思って……ダメ?」
まるでおねだりをするような声音、表情でジミンはそう問い掛けてくる。
余りに可愛らしくて、つい笑みをこぼしてしまう。
ダメな訳が、無い。断る理由が、何も無いもの。
そう言ってくれた彼に、私は改めて感謝の気持ちでいっぱいになる。
「勿論、いいよ」
満面の笑みを浮かべて、頷きながら答えてみせる。
それを聞いた彼はとてつもなく嬉しそうに微笑んでくれて、私は何処か擽ったさを感じた。
これからも、ジミンと話せるんだ――、なんて。
そんな事を想いながら。
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作者名:雛月 | 作成日時:2021年11月19日 2時