恋涙 1 S×R

恋涙 9 ページ9

・



まさか結婚式に呼んでいた2人が恋人同士だったとは！と、先輩は大興奮だ。

新婦さんも含めて、本日2度目の海人ばりの質問タイムが開催さる。




はぁ・・・しんど・・・



紫耀と彼女のエピソードを散々聞かされて、段々と頭が痛くなってきた。


何とかこの場から抜けられないか考えはじめた頃。



だいぶ酔いの回った◯◯さんが、更に最悪な提案をした。


「せっかくカップルおるんやから、キスせぇや〜」

「キャー、私も見たい！」


新婦さんもノリノリで乗っかる。

他のジュニアメンバーも、やはり結婚式でテンションが上がっているのか、「やれやれー」なんて悪ノリだ。


紫耀はかなり嫌そうにしていたが、新郎新婦のお願いとあって、やらざるを得ない雰囲気に負けたようだ。



姫子ちゃんに顔を近づけてーーー


頰にチュッと触れるだけのキスをした。



「ヒューヒュー！」

「ナイスカップル！」

「羨ましいなぁオイ！」



拍手喝采が飛び交う中、
俺は頭痛による目眩と吐き気を我慢出来なくなっていた。


「ちょ、トイレ行ってきます・・」



何とか断りを入れて、カバンを掴み二次会会場から逃げ出す。


もたつく足を引きずりながら店の外へ出て、人目につかない建物の隙間に逃げ込みしゃがみ込んだ。





「・・ハァっ・・ハァっ・・」



呼吸が苦しい。
そして、とめどなく流れる涙。


頭の中では、先ほどの2人のキスシーンがブラッシュバックする。


お前が紫耀と付き合えるはずがないんだ、という現実を突きつけられているようで、やりきれない。



「うっ・・ひっくうっ・・」


嗚咽を隠す事なく号泣しているとーーー




背中にそっと優しく置かれる手の感触。



振り返るとそこには。




何故か同じように涙を流している、

大吾が居た。







その後。

なんで大吾が泣いてんねんとツッコミをいれると、
「お前の気持ち考えたら泣けてきた」
なんて馬鹿みたいに純粋な言葉が返ってきて。


いい奴すぎる大吾を前にして、ささくれ立った心が少しずつ解れていく。


むしろ俺より号泣しだした大吾の姿がおかしくて、2人で泣きながら爆笑した。







その夜は大吾の家に泊めてもらう事になり。



「紫耀の事を吹っ切る為に俺を使えるなら使って」と言う大吾の言葉に甘えて。






俺は大吾と、恋人同士(仮)になった。




・

恋涙 10→←恋涙 8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す