真情 ページ42
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「そうか、そいつはおめでとう」
「……毛利探偵」
風見が突然、その長身を折った。それはあまりにも意外な行動で、霧立は目を見張った。
「以前は、とんだご無礼を致しました。申し訳ありません」
「いや、それが刑事の仕事だからな」
小五郎は少し笑って、首を横に振った。
「嫁さんは大事に、仲良くな。……安室くんも、早く帰れよ」
照れ臭そうに風見と霧立にそう言うと、安室に一言声をかけ、コナンの後を追ってその場から去っていった。
「あの、降谷さん……」
「降谷、これは……」
小五郎とコナンの前では愛想よくしていた安室――いや、降谷に、二人は慌てて弁明をしようとした。しかし二人の予想に反して、降谷は何も訊こうとはしない。
「いや、今日のところはいい。……霧立、データだけ寄越せ」
霧立から亡くなった社長の携帯電話とUSBメモリを受け取ると、降谷は代わりに大きな紙袋を押し付けた。
「じゃあ」
そう一言だけ残し、足早に去って行く。約束がある、というので気を遣ってくれたのだろうか。
すると、安室が去るのを見た受付の十文字小夜子が二人に声をかけた。
「先ほどはありがとうございました、おかげで助かりました」
「いえ、お礼には及びません」
丁重に頭を下げる様子は、彼女の品のよさを一層際立たせた。
「残念でしたわ、社長はいい人だったのに。社員みんなに好かれていました」
「そのようですね」
社長の死をパーティーの参加者に知らせたとき、瞬間の反応は様々であったがそのあとは一様に悲しみ、そして悼んだ。余程の好人物だったであろうことは、捜査員なら皆認識させられた。
「すみませんでした。早く犯人を確保しておくべきでした」
すぐに犯人を取り押さえなかったことを、霧立は心の底から悔いていた。しかし十文字小夜子は、笑って否定する。
「大丈夫ですよ。不謹慎ですが、ドラマみたいで密かに憧れていたんです。……本当ですよ?」
「しかし……」
霧立の言葉を、十文字小夜子はやんわりと遮った。
「私はね、刑事さん、日本の警察はすごいと思っています。あの何人も刑事さんがいた状況で、私がみすみす殺されるとは思いませんでした」
「……ありがとうございます」
霧立は、胸がいっぱいになりながら深々と頭を下げた。
「お仕事、頑張ってください」
そう言うと、彼女はにこやかに立ち去った。
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作者の勝手な裏設定
夢主の趣味は読書。
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長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» コメントありがとうございます。そろそろ佳境ですので、更新頻度を上げて頑張りますね。よろしくお願いいたします。 (2018年11月10日 7時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - わーやっぱり私の頭では迷宮入りしてしまう殺人事件でした。次の話が待ち遠しいです。 (2018年11月10日 1時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 長谷夏子さん» そういえば書いてありましたね(汗) ちょっと頭を捻ってみます。 (2018年10月18日 20時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» この作品にもコメントしていただいて、大変嬉しく思っています。名前には数字と時間帯を入れてみました。ネクストコナンズヒントは「ハイヒール」ですよ(笑)応援ありがとうございます。精進して参りますのでよろしくお願いいたします。 (2018年10月18日 18時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - え、えーっ。そんないきなりそう聞かれても困っちゃいますね……名前に数字が入っていることくらいしか分かりません(涙) 犯人が誰なのか気になりますね。作者さんの作品全て応援してます! (2018年10月18日 17時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長谷夏子 | 作成日時:2018年7月26日 12時