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霧立は牛原三矢を見つめ、ゆっくりと切り出した。
「牛原さん、社長を殺した犯人はあなたです。今から私の話す推理は、このことが念頭に置かれています」
「ちょ、ちょっと待ってください。僕は犯人なんかではありませんよ。証拠も動機もないじゃあないですか」
必死で訴える彼を、彼女はこれまた穏やかに制した。
「それはこれからご説明致します。それに、私もすぐに真相を突き止めたわけではありません。犯人でない人物が分かって、それから犯人が浮かび上がったのです」
口調は静かだったものの、彼女の目には凄みと迫力があり、彼は反論をすることが出来ない。そんな様子の牛原三矢を見ると、霧立は小五郎たちに向き直り、話を続けた。
「では、話を続けましょう。犯人を限定する証拠についてと、なぜ名探偵のあなた方に、この事件を解くことが出来なかったのか、を」
霧立は「あなた方」の部分で、小五郎、安室、そしてコナンに視線を移した。コナンと小五郎は難しい顔でいるものの、小五郎の隣にいる安室は至って涼しい表情だ。ひょっとしたら、もうこの事件の真相が読めているのかもしれない。
「ポイントは……この、ハイヒールの靴です」
そう言って、証拠物品の一つである靴を指すと、捜査陣は目を剥いた。
「ハイヒール?」
「ええ、そうです」
思わず聞き返した小五郎に、霧立が深く頷く。
「この黄色いハイヒールは、一之瀬さん、あなたのもので間違いありませんね?」
「ええ」
彼女は秘書の一之瀬朝子に確認すると、小五郎たちに再び向き直った。
「では、今彼女が履いている靴と、この証拠品の靴。何か違う点はありませんか?」
一之瀬をパイプ椅子に座らせると、右の靴を拝借した。
「さあ、よくご覧になって」
小五郎たちは、軽く首を捻りながらしげしげと二つのシューズを眺めている。そんな中、コナンが大人びた口調で言った。
「ヒールの太さが違うね。それに、高さも一之瀬さんが履いている方が、少し高いような……」
彼の指摘に、霧立は頷く代わりににっこりと微笑んでみせた。
「ああ、そうだね。……さて、牛原さん」
突然名を呼ばれた牛原三矢は、少し大袈裟なほどに体をびくつかせた。
「体験してみないと分からないことというのは、いくつかありますよね」
「……はい?」
「そうですね、例えば……」
訳の分からないといった様子の彼に、霧立は意地悪そうに目を細める。
「靴の履き心地、とかね」
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作者の勝手な裏設定
夢主の趣味は読書。
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長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» コメントありがとうございます。そろそろ佳境ですので、更新頻度を上げて頑張りますね。よろしくお願いいたします。 (2018年11月10日 7時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - わーやっぱり私の頭では迷宮入りしてしまう殺人事件でした。次の話が待ち遠しいです。 (2018年11月10日 1時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 長谷夏子さん» そういえば書いてありましたね(汗) ちょっと頭を捻ってみます。 (2018年10月18日 20時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» この作品にもコメントしていただいて、大変嬉しく思っています。名前には数字と時間帯を入れてみました。ネクストコナンズヒントは「ハイヒール」ですよ(笑)応援ありがとうございます。精進して参りますのでよろしくお願いいたします。 (2018年10月18日 18時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - え、えーっ。そんないきなりそう聞かれても困っちゃいますね……名前に数字が入っていることくらいしか分かりません(涙) 犯人が誰なのか気になりますね。作者さんの作品全て応援してます! (2018年10月18日 17時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長谷夏子 | 作成日時:2018年7月26日 12時