溜息 ページ26
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「順番にお話をお伺い致します。別室で少しお待ちいただけますか」
目暮が物腰穏やかにそう言い、女性二人が他の捜査員と共に退室した。残った小五郎と目暮は、社員の牛原三矢に話を聞く。
「社長のことについて、何かご存知なことは?」
牛原は少し考え、ぎこちなく話し始める。
「社長とは個人的に知り合いだったわけではないので、詳しいことは何も……。社内で流れる噂を耳にする程度です」
「なるほど。……ちなみに、どんな噂です?」
「よくあるやつです。社長が秘書の一之瀬さんと恋仲だとか、そういう下世話な」
「そうでしたか。では、あなたの今日午後三時頃から四十五分ほどの間、何をなさっていました?」
「廊下の一番奥の部屋で、カメラを探していました、社内新聞を作るはずでしたので。しかしこんなことになっては……」
「社内新聞ですか」
「ええ」
相変わらず緊張しているようだったが、無理もない。警察が相手では萎縮もするだろう。
結局、牛原三矢からは捜査に役立ちそうな情報を得ることは出来なかった。この分では、目暮たち以外の捜査員によるパーティー客の聞き込みにも期待は出来ないかもしれない。
すると、彼と入れ違いに高木が血相を変えて部屋に飛び込んできた。
「警部、鑑識からです。被害者の首の傷は、刃物ではなく銃弾によるものだと判明しました」
「何!?」
「それから……現場から足跡が。女性のもののようです、細くて高いヒールのある靴だと」
新たに判明した重要な事実は、これだけではなかった。次にドアを開けた千葉刑事は、厚めの冊子を手にしていた。霧立にはそれに見覚えがあった。受付に設置されていた記名帳だ。
「これは受付の記名帳なのですが、不審な点がいくつか。まず、この三条杏子という女性なのですが、社員でも関係者でもありません」
霧立は、にわかに胃がきりきりと痛み始めるのを感じた。まさかこんなことになるとは。
「それともうひとつは」
千葉は霧立に体を向ける。
「霧立警部、あなたのお名前が書かれていません」
「友人の紹介だったので。招待状も受付の方にはお見せしませんでしたよ」
努めて冷静な態度で答える。もっともらしい返答だ。横目でちらりと安室を見ると、彼は霧立が偽名を使ったことに気が付いたようで、呆れた目線を彼女に送った。
――勘弁してくれ。
時刻は四時半。霧立は溜息をつきたくなるのを堪え、推理に集中した。一刻も早く事件を解決しなければ。
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作者の勝手な裏設定
夢主の趣味は読書。
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長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» コメントありがとうございます。そろそろ佳境ですので、更新頻度を上げて頑張りますね。よろしくお願いいたします。 (2018年11月10日 7時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - わーやっぱり私の頭では迷宮入りしてしまう殺人事件でした。次の話が待ち遠しいです。 (2018年11月10日 1時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 長谷夏子さん» そういえば書いてありましたね(汗) ちょっと頭を捻ってみます。 (2018年10月18日 20時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» この作品にもコメントしていただいて、大変嬉しく思っています。名前には数字と時間帯を入れてみました。ネクストコナンズヒントは「ハイヒール」ですよ(笑)応援ありがとうございます。精進して参りますのでよろしくお願いいたします。 (2018年10月18日 18時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - え、えーっ。そんないきなりそう聞かれても困っちゃいますね……名前に数字が入っていることくらいしか分かりません(涙) 犯人が誰なのか気になりますね。作者さんの作品全て応援してます! (2018年10月18日 17時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長谷夏子 | 作成日時:2018年7月26日 12時