起床 ページ14
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睡眠というのは偉大だ。霧立は心底そう思った。徹夜など、するものではない。人間の三大欲求の一つなだけあり、とても重要なのだ。
目を覚ました霧立は、腰に回る筋肉質な腕に、寝る前の己のこっ恥ずかしい愚行を思い出した。すべて睡眠不足が故だ。
背中から、寝こけている風見の体温が伝わるのはまだいいとして、首許に吐息がかかるのはよくない。
――いや、悪くもないのだけれど
「風見」
霧立は体の向きはそのままに、小声で話しかけた。下手に寝返りをうとうものなら、
「……霧立さん」
風見は、霧立が思っていたよりもすぐに瞼を開いた。この体勢で喋られると、なおさらこそばゆい。
「……おはよ」
「……おはようございます」
そこで、霧立はようやく体を風見の方へ向ける。そのまま上体を起こした。
「あなたが、寝ている内にベッドから落ちていなくてよかった」
その可能性は大いにあった。風見は苦笑いを浮かべて、立ち上がりながら言った。
「ええ、自分でも驚いていますよ」
霧立さん、寝相は大人しいのですね、という言葉はキッチンの方から聞こえた。
風見はすぐに、水の注がれたグラスを二つ持って戻ってきた。ベッドに再び腰掛け、一つを霧立に手渡す。
「寝相『は』?」
霧立が受け取りながら笑い、風見は肩をすくめて視線を流した。
「何か、異論がありますか」
「……驚いた」
グラスのミネラルウォーターを一口飲み込むと、面白がるような笑みで、霧立は続ける。
「風見警部補は、出世に興味がないと見える」
「何をおっしゃいますか。……それで」
軽快な視線の交わし合いに、どうしようもなく心が躍った。
「このあとは、どうなさいますか」
風見が尋ねた。霧立はすぐに答えることは出来なかった。少し考え込む彼女に、風見は言った。
「……身支度が終わる前に、考えておいてくださいね」
身支度と言われても、彼女はそう時間をかけない方だ。顔を洗い服を着替え、歯を磨いたあとに軽く化粧をして、髪を整え――
よく考えるとかなりある。それでも今着る服はとりあえず決まっているし、化粧道具もあまり持ち歩いてはいない。
「とりあえず、一旦自宅に戻る」
「……? 一旦、ですか」
霧立は頷き、多少頬を赤らめながら答えた。
「まだ、あなたと一緒にいたいから。……それとも、何か用があるの?」
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作者の勝手な裏設定
夢主の趣味は読書。
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長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» コメントありがとうございます。そろそろ佳境ですので、更新頻度を上げて頑張りますね。よろしくお願いいたします。 (2018年11月10日 7時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - わーやっぱり私の頭では迷宮入りしてしまう殺人事件でした。次の話が待ち遠しいです。 (2018年11月10日 1時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 長谷夏子さん» そういえば書いてありましたね(汗) ちょっと頭を捻ってみます。 (2018年10月18日 20時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» この作品にもコメントしていただいて、大変嬉しく思っています。名前には数字と時間帯を入れてみました。ネクストコナンズヒントは「ハイヒール」ですよ(笑)応援ありがとうございます。精進して参りますのでよろしくお願いいたします。 (2018年10月18日 18時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - え、えーっ。そんないきなりそう聞かれても困っちゃいますね……名前に数字が入っていることくらいしか分かりません(涙) 犯人が誰なのか気になりますね。作者さんの作品全て応援してます! (2018年10月18日 17時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長谷夏子 | 作成日時:2018年7月26日 12時