落雷 ページ1
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「……疲れた」
霧立Aは、よれたスーツ姿でぼんやりと呟いた。爆弾で木っ端微塵になりかけていた先ほどは、変に興奮していたらしく、今はずきずきと頭が痛むし、ダムが切れたかのように疲労が押し寄せている。人一倍度胸のある彼女も、さすがに一度にいろいろなことが起こりすぎて、混乱を隠せない。
「大丈夫ですか」
部下の風見裕也が気遣うように話しかけると、霧立は力なく笑う。
「平気……とはいかないかも」
他の仲間たちは、よそよそしく現場検証をしていたが、誰も二人と目を合わせようとはしない。
「あんなところ、見られちゃあね」
実にロマンチックな口付けだった。ただ霧立は、それを風見とだけ共有し、秘密にしておきたかったのだ。
「……ですね」
「一旦帰って、シャワーを浴びたい。出来れば仮眠もとりたい」
「今度は一体何日かかるでしょうね」
「私は先月のテロのときには、三途の川岸だったからね。今回で徹夜の最高記録更新、といくかもしれない」
「……いろいろと笑えませんよ、それ」
顔を見合わせて微笑んだ。互いが生きていることへの安堵が、今になって身体を震えさせた。だがそれは、ある人物の登場で、恐怖と不安にとって変わる。
「おい」
低く、よく通る声。
「風見、霧立、ちょっと来い」
振り向くと、仁王立ちの降谷零。そんな彼に、二人は恐々近付いた。
「その……なんだ」
降谷は二人の顔を見つめた。軽く咳払いをすると、大きな手のひらを、風見と霧立の肩に乗せる。
「よくやった。無事でなによりだ」
素っ気なく言ったものの、彼らへの労いと気遣いがよく滲んでいる一言だった。
風見と霧立は、降谷の言葉に雷に撃たれたようにショックを受け、しばらくその場に突っ立っていた。
「なんだ、その反応は」
不満げな降谷に、二人は顔を見合わせる。
「てっきり……叱られるかと」
霧立の答えに、降谷は機嫌を損ねたように鼻を鳴らすと、片眉を吊り上げた。
「そんな必要ないだろう。少なくとも、今はな。……ゆっくり休め」
そう言い残し、降谷は足早に現場へ消えていった。
「……本当は爆弾は爆発してて、これは幻ってことはない? ここはちゃんと現世なんだろうね?」
「そうでないと、困ります」
眼鏡を指で挟んで押し上げると、風見は薄く笑って言った。
「せっかくの告白が、意味を成さなくなりますからね」
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作者の勝手な裏設定
夢主の趣味は読書。
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長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» コメントありがとうございます。そろそろ佳境ですので、更新頻度を上げて頑張りますね。よろしくお願いいたします。 (2018年11月10日 7時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - わーやっぱり私の頭では迷宮入りしてしまう殺人事件でした。次の話が待ち遠しいです。 (2018年11月10日 1時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - 長谷夏子さん» そういえば書いてありましたね(汗) ちょっと頭を捻ってみます。 (2018年10月18日 20時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
長谷夏子(プロフ) - たんぽぽ珈琲さん» この作品にもコメントしていただいて、大変嬉しく思っています。名前には数字と時間帯を入れてみました。ネクストコナンズヒントは「ハイヒール」ですよ(笑)応援ありがとうございます。精進して参りますのでよろしくお願いいたします。 (2018年10月18日 18時) (レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
たんぽぽ珈琲(プロフ) - え、えーっ。そんないきなりそう聞かれても困っちゃいますね……名前に数字が入っていることくらいしか分かりません(涙) 犯人が誰なのか気になりますね。作者さんの作品全て応援してます! (2018年10月18日 17時) (レス) id: 24c9be7e32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長谷夏子 | 作成日時:2018年7月26日 12時