物語の始まりだ (ページ7)

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第7話ページ7

「至さんがいる時じゃなくてもいいんですか？」
「もう公演まで七週間しかないから、すぐに脚本を用意しないと
　間に合わないの。」

咲也の問いにそう答える監督。

「昔の脚本を使うわけにはいかないんでしょうか？」
「それもいいかもしれませんね。」

昔…そういえばこの劇団は昔は栄えていたんだっけと
支配人と監督の会話から思い出す。

(そういえば、一度だけMANKAIカンパニーの公演を見た事があったっけ。)

Aはこの寮に来る前に寄った劇場を見て思い出したのだ。
この劇団は自分が演劇を始めたきっかけである、と。

役者１人１人の表情が生き生きとしてて、それから自分も芝居をやりたい、と
思い、子役が集まる劇団に入団したのだ。

今となっては懐かしい思い出である。

「先代春組のロミオとジュリエット、すごく面白かったですよね！」

Aが見た時は確かロミオとジュリエットの再演であったのを思い出して
咲也に同意する。

「私、一回だけ見た事あるけど確かに面白かった。」
「同じだと比べられるだろうけど。」
「それは、ちょっとつらいかな……。」

「ロミオとジュリエット、イイネ。
　ワタシの国でもロミオが宇宙に帰ってくシーンで皆大号泣ダヨ。」
「それ、話が違うと思う。」

シトロンの謎のロミジュリの説明に監督がツッコミを入れる中、
綴が口を開いた。

「あの――。」
「何、綴くん？」
「できれば、俺が新しい脚本を書きたいんすけど……。」
「そっか……元々脚本家志望だもんね。」

ここに来る途中で、それぞれの劇団に入った動機を聞いたA。
真澄の理由には少し顔が引きつったものの、確かに綴が脚本を書きたくて
という理由は聞いた。

でも、みんな初心者で読み合わせも稽古も時間がかかる。
けれど、この公演が上手くいかなかったら―――。
そうAは考えた。