物語の始まりだ (ページ2)

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第2話ページ2

ショッピングも終わり、家に帰ろうと天鵞絨駅を降りる。
とそこには、行きに見た劇団員たち。

「嘘でしょ…まだここに居たの？」

とAは呟く。掲示板の前に居る彼らの前を通過しなければ家には帰れないのだが……。

「絶対、佐久間くんには気付かれる……。」

咲夜は普段から結構周りを良く見ていることをAは知っている。
気付かれないほうが難しい。しかもクラスメートだから話しかけられたら無視なんて出来ない。

「それなら詳しいお話を聞かせてください。」
「はい！では、団員寮にご案内しますね！」

様子を伺っていると、世間一般にはイケメンである、と言われそうな
サラリーマンが団員になるらしい、ということが分かった。
そして、午前中の外国人もいつの間にか、馴染んでいる。

スカウトしているところから、新しく劇団を作るのか、ということは
伺えたが、なんだか多方面で凄い劇団になりそうだ、とAは思う。

それにしても、あの集団をどう避けて帰ろうか、と思案していると

「あれ、藤宮さん？」

咲夜に先に気付かれてしまった。もうこれでは劇団から避けることは出来ない。

「あ、佐久間くん。こんばんは。」

Aはなるべく焦りを顔に出さず、にこやかに咲夜に挨拶をする。

「咲夜くん、この子は？」
「監督、紹介しますね。こちらは、俺のクラスメートの藤宮Aさんです。」
「藤宮Aです。よろしくお願いします。」

咲夜に紹介されて、目の前の女性に挨拶をするA。
表面上は笑顔ではあるが、早く帰りたいという気持ちが頭を支配している。

「私は立花いづみです。MANKAIカンパニーという劇団の総監督をやっております。
　よろしくお願いします。」

自分より5歳ほど上だろうか、大人っぽくてどこか幼さが残った女性は
Aに対して綺麗な挨拶とお辞儀を返してきた。

そこでふと、先ほどの言葉を思い出す。
そういえばこの女性、総監督と言っていたな、と。

「えっと、監督…なんですか。お若いのに凄いですね。」

聞き間違えかもしれない……が、気まずくなる前に、とこちらから話題を提供する。

「あー……ちょっと色々とあって。」

色々、とは言っているが、どうやらAの聞き間違えではなかったようだ。
中々この業界…と言ってもいいのかは分からないが、監督がここまで若いというのは珍しい。
Aは素直にいづみを尊敬の目で見始めた。