157 ページ7
.
滝沢さんが仕切ってくださって、無事に引越しを終えた事への乾杯と、これからに向けて乾杯をして。
疲れた身体にアルコールが染み渡る。
皆さんの話し声も、熱気で暑くなる身体を冷ます夜風も。
全部が心地よくて。
不意に、幸せだなあ、と胸を緩く締め付ける。
滝沢「Aちゃん食べてる？」
「はい、頂いてますよ！滝沢さんは飲んでますか？」
滝沢「俺車だからね〜」
「あ、てっきりお泊まりになるのかと…すみません、頂いてしまっていて」
滝沢「Aちゃんの部屋泊めてくれる？」
「んふふ、お泊まりして行かれますか？」
岩本「こら、Aー。俺との約束覚えてる？」
「え、でも、何も起こってませんよ？」
少し先の所で岩本さんが怖い顔をしていらっしゃるのは分かるけれど。
何からあったら呼んで、って言われたのはきちんと覚えているつもりだ。
滝沢「甘やかしてるなあ」
「そうですね。いつも助けて頂いてます」
滝沢「違う違う。あいつらが、甘やかされてるね、Aちゃんに」
「え、いや…そんな、事ないですよ」
滝沢「あいつらなりの形なのよ。あんな、顔、無防備に晒せちゃうくらいには甘えてるよ。あいつら」
「…だと、嬉しいです」
滝沢「ねえ、やっぱ泊まってってもいい？」
内緒の話をするように耳元で話す滝沢さん。
もちろん、とお返事をすると缶ビール持ってきて、小さく乾杯をした。
ラウール「Aちゃーん、こっちきて？」
「あ、はい！」
滝沢「よろしくね、Aちゃん」
「はい。よろしくお願いします！」
ラウールくんに呼ばれて。
まだ帰りたくない、やっぱり泊まるってちょっと拗ねていらっしゃる。
ラウール「Aちゃんいいでしょ？僕もここで泊まりたい」
可愛らしいお願いはなんだって聞いてあげたくなってしまうけれど。
ラウールくんのお兄さんたちが心配そうにこちらを見ていらっしゃいますよ。
「私もいいですよって言いたいのですが…」
ラウール「…ん、言ってくれる？」
「楽しかったですか？ほんの少ししか一緒に居られなかったですが」
ラウール「ん！すごい楽しかった！」
「私も、楽しいです。だから、この時間が少しでも長く続けばいいな、って身勝手に思っています」
そこまで言うと聡い彼だから。
わかった、と寂しさを隠すように抱きついてきた。
あまり子供扱いはしたくないけれど、腕を伸ばして頭を撫でれば嬉しそうに笑ってくださるのが嬉しくて。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1412人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すぽんじ。 | 作成日時：2021年5月29日 0時
