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本当に、無意識だった。
もうバイトをやめていることは頭の中では
理解出来ているのに、もしかしたらって、
その感情だけで動いてしまっていた。
こんなことするぐらいなら連絡の
ひとつやふたつすればいいのに
怖くて出来なかった。
あからさまに避けられるのが怖かった。
平『最悪や……』
下を向くと涙が溢れそうになるから
無理矢理上を向いて空を仰ぐ
見上げれば雲ひとつない快晴
髪を優しく撫でる風が通り抜ける
隣にAがいない季節を
もうどれぐらい巡っただろう
そんなこと改めて考えたくもないけど。
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ムシャクシャして、
家に着くなり無造作にポケットから煙草の箱を取り出し、ライターに火をつける
平『……あかん、やっぱ風呂入ろ』
でも一度灯したライターの火を消し
ぐしゃぐしゃに握りしめた箱と一緒に
机の上へ投げるように置いた
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溜め息をつきながら洗面台に手をついて
そのまま鏡の中の自分を見つめる
俺って、こんな顔してたっけ?
鏡に映る自分を見て思わず絶句した
平『ほんま酷い顔してんな』
呆れてボソッと呟いた声が虚しく消えていくように
貧相な顔を頭の中から搔き消す
ピアスを取ろうと耳に手を伸ばすけど
何もしても思い出すのはAのことだらけで
それがまだ俺を脆く弱くする
左にしか開いていなかった穴は
気付けば右の耳たぶにも同じような穴を作っていた
昔、Aがくれたピアス
当時は片耳しかつけられなかったけど
それが今更妙に勿体なく感じてしまって。
ほんま弱いな、俺。
何処かで彼女を感じていないと潰れてしまいそうになるんだ。
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さっき廉くんに会った時のことを思い出す
元気にしてるかな、
ひとりで泣いたりしてへんかなって、
知ったところで無意味な質問を
廉くんに投げかけたはいいものの
返ってきた返事は
“ 元気にしてますよ ” って、たったそれだけ。
本当は何処かで期待していたのかもしれない
俺には彼女が必要なのと同じように
彼女にも俺が必要だと誰かに認めて欲しかった
でも儚く散った少しの期待と
それと同時にやってきた胸を締め付ける大きな痛み
心に空いた穴を埋める何かをずっと探していた
平『…会いたいな』
もし昔のように笑い会えたらどんなに幸せだろう。
叶わない願いをそっと呟いて
Aの笑顔を思い浮かべた。
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みう(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます!そのようなことを言って頂けて書いてよかったなと本当に思いましたありがとうございます。続編を書いた際はまたお付き合いよろしくお願い致します^^ (2020年4月13日 23時) (レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - 今日この作品を見つけたのですが、面白くてあっという間に全て読んでしまいました!笑 後半は胸が苦しくなるような場面が多かったので、もう一度結ばれたあとの幸せな主人公と紫耀くんがぜひ見たいです!! (2020年4月13日 2時) (レス) id: afdd2d5378 (このIDを非表示/違反報告)
みう(プロフ) - 美月さん» コメントありがとうございます!私の作品が1番だなんて嬉しいお言葉ありがとうございます。こちらこそ最後までお付き合い頂き本当にありがとうございました^^ (2020年4月12日 23時) (レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
みう(プロフ) - 京本ゆいさん» コメントありがとうございます!楽しみにしてくださってありがとうございます、そして最後までお付き合い頂きありがとうございました。続編をもし書いた際はまたお付き合い頂けると嬉しいです^^ (2020年4月12日 23時) (レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - お疲れ様です!廉くん最後はやっぱり好きな人の幸せを選んだんですね( ; ; )お互いを想い続けられるのって素敵ですね。占ツクで見てきた中で一番好きな作品でした。更新を楽しみにしていたので、寂しいですね。楽しませていただき、ありがとうございました! (2020年4月12日 19時) (レス) id: 4599bc1e74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みう | 作成日時:2020年3月9日 18時