76 ページ27
.
バイト終わり、
今日は家に帰ったら1人で飲もうかな、なんて
そんなことを考えながらコンビニに入ろうとすると
公園にゆっくり足を踏み入れる見覚えのある
背中が見えて、声を掛ける
廉『あれ、Aちゃん？』
でも俺の声なんか聞こえていないのか
少しの街灯しかない真っ暗な公園に
真っ直ぐ突き進むから
思わず走って追いかけて腕を掴み引き止めた
廉『なぁ、Aちゃんやんな？』
「…っ……」
やっと振り向いて交わった視線
でもあまりにも普段とは違う姿に
思わず言葉を失ってしまった
廉『どうしたん……』
真っ赤に染まった鼻先
泣き腫らした瞼
潤いを含んだ瞳
「廉、くん……」
俺の顔を見るなり余計に酷く泣き出す姿に
どうしていいのか分からず
とりあえず膝をかがめ目線を合わせる
廉『こんなとこにひとりでおったら危ないやんか』
何も言わずに
ただ涙を流すだけの彼女に
なるべく優しく話しかけた
廉『家、帰らへんの？』
「……帰らない」
廉『じゃあどうするん？』
「………」
廉『俺ん家、来る…？』
静かに頷いた彼女に
驚きが隠せない
自分が聞いたことやけど、
まさか素直に頷くなんて思ってもいなくて。
廉『ん、おいで』
あくまでも冷静に、
今は目の前の彼女を助けてあげやなって、
それに必死だった。
.
それから、
何の話をしながら家まで連れてきたかなんて
ほとんど覚えていない
ただ目の前の状況を飲み込むのに精一杯だった。
廉『好きなとこ座っとってええから』
幸いなことに部屋はさほど散らかっていなくて
不意にもホッとする
でも今はそんなこと気にしてる場合じゃなくて。
「ごめんなさい……っ…」
廉『何も気にせんくってええから、な？』
温かい紅茶を入れた2人分のカップを持って
Aちゃんの隣に腰掛ける
膝を丸めて蹲る姿に
思わず抱きしめたい衝動に駆られるけど
そこはグッと堪えて
横目に少し様子を伺う
.
「…聞かないんですね、何も」
少しは涙も収まったのか
静かな時間がただ流れる中
落ち着いた様子で独り言のように呟いた
廉『聞かへんよ、だって話したくないやろ？』
気になるのは山々、
でも追い詰めるようなことはしたくないから。
廉『でもさ、1人で思い詰めるのってしんどいやんか？せやから、Aちゃんが話したくなったらその時はどんだけでも話聞くから』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1467人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みう(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます！そのようなことを言って頂けて書いてよかったなと本当に思いましたありがとうございます。続編を書いた際はまたお付き合いよろしくお願い致します^^ (2020年4月13日 23時) (
レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - 今日この作品を見つけたのですが、面白くてあっという間に全て読んでしまいました！笑 後半は胸が苦しくなるような場面が多かったので、もう一度結ばれたあとの幸せな主人公と紫耀くんがぜひ見たいです！！ (2020年4月13日 2時) (レス) id: afdd2d5378 (このIDを非表示/違反報告)
みう(プロフ) - 美月さん» コメントありがとうございます！私の作品が1番だなんて嬉しいお言葉ありがとうございます。こちらこそ最後までお付き合い頂き本当にありがとうございました^^ (2020年4月12日 23時) (レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
みう(プロフ) - 京本ゆいさん» コメントありがとうございます！楽しみにしてくださってありがとうございます、そして最後までお付き合い頂きありがとうございました。続編をもし書いた際はまたお付き合い頂けると嬉しいです^^ (2020年4月12日 23時) (レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - お疲れ様です！廉くん最後はやっぱり好きな人の幸せを選んだんですね（ ; ; ）お互いを想い続けられるのって素敵ですね。占ツクで見てきた中で一番好きな作品でした。更新を楽しみにしていたので、寂しいですね。楽しませていただき、ありがとうございました！ (2020年4月12日 19時) (レス) id: 4599bc1e74 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みう
| 作成日時：2020年3月9日 18時
