9.消えるのは何か ページ9
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貴「・・・・・え?」
あまりに、私にとって的外れな事を言われて
少し口元が上に歪む。
でも、心はざわざわと
とりとめのない不安がぶわあと広がる。
身体の重心を望の方に寄せると
背中に望の腕があたる。
別に抱きしめられてるわけでもなんでもないけど
ただ、安心できる気がした。
貴「・・・消毒液って、あれでしょう?ツンとする匂いの。」
淳「それです。」
貴「でも、全然匂いしない・・・」
淳「・・・・」
貴「・・・・え?ちょっと望、これ嗅いでみて。」
望「そんな近くに持って来んでも、消毒液の匂いするよ。」
望が、遠くに感じる。
あの時と一緒。
全く一緒だ。
望の香りが感じられなかった、あの時。
貴「・・・何これ。」
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淳「詳しくは分かりませんが。」
淳「小泉さんの病気は、五感を失う病気です。」
淳「世界では何人か同じ病気の人が発見されてますが。」
淳「・・・ストレス性のもの、としか、分かっていません。」
中間先生が
わざわざ、暗い顔を、隠そうなんてするから
だから、逆に察してしまった。
淳「どの患者も、病気が発症する前に、何らかの強いストレスが与えられていて・・・」
貴「もう分かったよ。先生。」
治らない。
悪化する。
見えなくなる。聞こえなくなる。何も感じれなくなる。
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貴「きっと、しんでしまうんやろ?」
そうやって徐々に
望だけでないすべてが、
私の世界から消えていくんやろ?
・・・・・ああ、違う?
私が世界から消えていく?
そんな言葉遊びを頭の中でしてみた。
そしたら案外、こんな時でも笑えたよ。
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作者名:桜翔 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2017年12月16日 21時