6.世界が色褪せていく ページ6
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貴「あはははっ!!」
2人とも、原因は雪によるスリップ事故。
お母さんは買い物帰りと思われる時に。
お父さんは出張先で。
同じようなタイミングで
全く別の場所で。
貴「・・・・・ははっ。」
2人の結婚は、駆け落ちみたいなものだったらしい。
こんな時でも、一緒なんやね。
じゃあ同じ場所だったらよかったのにね。
いっそそこに私もいたらよかったのにね。
駆け落ち同然の結婚をよく思わない親戚たちは
私をどうすんだろう。
私は・・・・・・・
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望「A!」
ハッと意識が戻されると
望が、私を抱きしめていた。
高くにある胴を、折り曲げて
私を強く抱きしめる。
望「大丈夫?」
貴「・・・だいじょーぶ。」
望「んな訳ないやろ。」
貴「あはは・・・」
望「から、先抱きしめた。」
その理論、よく分かんないよ、望。
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目を閉じて、ぎゅっと望にしがみつく。
そして、胸板に頬を摺り寄せる。
望のいつもの
ちょっと甘ったるい香水の匂いに
柔軟剤や、望本来の香りが混じった
望だけの、私の大好きな香りが・・・・
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しない。
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貴「えっ?」
望から急いで離れる。
いきなり離れられて
不思議そうに、少し不服そうな望と、目が合う。
望・・・やんな。
貴「望、今日、香水してる?」
望「え?・・・いつも通りしてるけど。」
鞄からよく見る香水の容器を取り出し、渡すのを
奪うように受け取る。
栓を緩めて
中の液を、たぷん、と揺らす。
鼻をすすると、空気が中に入っただけだった。
匂いが、しない。
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貴「・・・どういう、こ・・・と・・・・・」
A、と何度も呼ぶ声がする。
徐々に消えて行って、何も聞こえなくなる。
望の姿も、何も、見えなくなる。
意識も段々うすれて
望がいたはずの方に手を伸ばした。
でも何かに触れた感覚はないまま。
世界から、望が消えた。
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作者名:桜翔 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2017年12月16日 21時