春なんてこなければいい 【Kento.N】

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「でも、そんなに風呂場って響いて外の声聞こえないもんなんだね。」





桜餅を両手で持って頬張るAは


思ったより口いっぱいに含んでたせいで



もごもごさせながら、かろうじて俺は「私も驚きました。」と聞こえた。









ちなみに今日の晩御飯は冷製パスタ。


今日は夏並みの暑さだったから。


ギリギリまで冷蔵庫で冷やされてたから、お皿も冷え冷え。




テーブルに夕食が用意されてなかったのは、そういうことらしい。









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いつもは、別に必要はないからか


あまり食には興味なさそうで


ただ、この「食事の時間」を楽しんでる様子だったけど



今のAは









「うっ・・・喉詰ま・・・」

「一気に食べるからー！ほら、お水。」

「ありがとうございます。」





好きな食べ物を前にして


目を輝かせる子供みたいで。









「もしかして、桜餅気に入った？」



そう聞くと、少し照れくさそうにして頷いた。









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「でも桜って、こんな香りするんですか？」

「んーするって言う人もいるけど、俺は感じた事ないかな。」

「ていうか、桜ってそんな綺麗なんですか？」

「桜知らないの？」

「知ってはいますし、写真も見たことありますけど、目で見たことは無いですね。」





Aは、「あ。」と


目を光らせて顔を上げる。









「前言ってたじゃないですか、何かしたいこと考えてといてって。」

「ああ。」




絶対に嘘だって思ってたけど


覚えてたんだ。





でも、


何か、Aらしいな。









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「私、桜が見たいです。」

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