Dr.SnowMan

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田中side

笑気麻酔、にピンとはきてないけれど、岩本くんがちょっと気持ちが穏やかになるガスを吸ってもらうね、と説明すると納得したみたい。

親知らずの抜歯はおよそ20分ほど。

とりあえず、痛い思いをしないことに半信半疑ながらさっきより落ち着いてくれたのかな。

岩本『じゃ、はじめていこっか。大丈夫だからね、なんかあったらすぐに教えてね、』

『……ん、っ、』

田中『麻酔が落ち着くまで俺と手繋いでようか、ね、笑、よしよし、』

岩本くんが椅子を倒した時、Aちゃんが自分の手をぎゅうっとしたから、そこに俺の手をそっと重ねた。


岩本『……笑、おっけ、お鼻にこれつけるね、……じゃあ、お鼻でゆーっくり吸って、お口でふーって吐いてごらん。そうそう、上手、……』


田中『そうそう、もう一度やってみよっか、……ちょっとぼーっとしてきたね、気分は悪くない？』

笑気麻酔ってやっぱすごい。顔が穏やかになって、ぎゅっと握られてた手の力が弱くなって、

岩本『じゃ、そのままお口開けてねー、……大丈夫だよー、』


岩本くんはささっと、麻酔を打って抜歯を開始した。


時々、歯を抜く機械の音で顔をしかめて小さく唸るAちゃんを優しく宥めながらなんとか終わらせる。



岩本『Aちゃん、抜歯終わったからね、お疲れ様、』

岩本くんが優しく声をかけると、まだ麻酔が抜け切っておらず意識があるのか、ないのか、分からないところでにこっと笑った。


岩本『お、今までで一番可愛い笑顔だったんだけど、笑』

田中『そうだね、……こんな感じに笑うんだ、』

まだ俺らに怖がって怯えた表情しか見せてなかったAちゃん。だからこそ、不意に見えた笑顔が新鮮で。



麻酔が解けた後も穏やかな顔で一週間後の抜糸の話も聞いてくれた。

その後も腫れも少なかったみたいで、無事抜歯の処置は終わり。

それからも、歯医者さんは怖くないところだと分かったのか、定期的に歯科検診に来てくれるように。


ね、やっぱり歯医者さんは怖いところじゃないんだよ。


Fin.

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