今の自分 ページ9
罪悪感に苛まれたような母親の表情が思い出される。
「A、ごめんね、隠してて……」
母親を責めるつもりは、毛頭ない。
むしろ母親は、あたしを思ってそうしてくれたのだ。
思えばこれまで母親があたしを必死で結婚させようとしたのは、
恋人の存在をあたしの中から消してしまったことへの罪滅ぼしのつもりだったのかもしれない。
「落ち着いた？」
辛抱強く胸板を貸してくれていたきみくんが、やがてあたしの顔を覗き込んで、言った。
「何かあったときは、美味いもんでも食うて元気出そうや！」
そう言ってスッと立ち上がって冷蔵庫を覗いて
「ハムエッグくらいしか作れへんけどええ？」
無邪気な顔でそう言った。
「卵2個ぶつけたら片方しか割れへんのやで！」
ドヤ顔でどうでもいい知識をお披露目しては、
「あぁぁっ！形崩れてもうた！」
アタフタとキッチンを走り回っては、
「あっ！もういっこの方は上手くいったわ！」
嬉しそうな笑みを浮かべる。
――あたしの中でふわふわと湧き上がるこの感情を、
あの人にも感じていたのだろうか。
――あたしがきみくんと過ごしてきた時間を、
同じようにあの人と過ごしていたのだろうか。
行き場のない罪悪感と、
モヤモヤと、
劈くような胸の痛み。
そしてそれを感じて悩んでいること自体が、
目の前にいる愛しい人に対しての罪悪感に変わるから
あたしの感情はもはや行き場がなかった。
だって言えるはずないよ。
"きみくん、あたし丸山さんと付き合ってたの？"
なんて。
そもそもきみくんは、知ってたのかな？
他のメンバーさんは？
高木くんは？
誰が知っているんだろう？
延々と続く負のループから逃げ出すように、
「あたし成功した方もーらおっと！」
ぐちゃぐちゃになったハムエッグの乗った皿をきみくんの方に差し出しながら、笑ってみせた。
「あ！おまっ、ずっこいな！
いや失敗したん俺のせいやけど！」
うん、笑える。
うん、好きだ。
過去の記憶が抜けていることが、こんなにもショックだったのは初めてだった。
だけどそれは仕方のないことで、
やっぱり、これから先の時間で空いた隙間を埋めていくことになるんだ。
丸山さんのことで動揺したのは事実だけど、
"今"のあたしの好きな人はきみくんだから。
抜けた過去のことを考えても仕方ない、よね。
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渡璃凛(プロフ) - ○○さん» 長らく返信しておらずすみません;;; よろしければ引き続きよろしくお願いします。 (2021年5月7日 10時) (
レス) id: 800f7c5fac (このIDを非表示/違反報告)
○○(プロフ) - うぅ苦しい辛い…泣。けどめちゃくちゃ展開がまた楽しみになりました！はあああ丸うううう泣 (2021年1月25日 20時) (レス) id: 155ff908a4 (このIDを非表示/違反報告)
渡璃凛(プロフ) - コメントありがとうございます。恐れ多いお褒めの言葉をたくさんいただいて嬉しいですしこれからもお付き合い頂きたいですしおすし(笑) 若干亀更新ですがよろしくお願いします。 (2021年1月25日 10時) (レス) id: 800f7c5fac (このIDを非表示/違反報告)
○○(プロフ) - 内容もありきたりじゃないし、読みやすいし聞き手側に想像しやすい表現ですし！変な関西弁じゃないですし！自然な感じで内容も面白くて急展開になってきてて面白いですね！(いやおすしって言わないんかーーーーーーい自分) あ、おすし← 次のページも楽しみにしてます！ (2021年1月25日 3時) (レス) id: 155ff908a4 (このIDを非表示/違反報告)
○○(プロフ) - 面白いですね！ (2021年1月25日 3時) (レス) id: 155ff908a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：渡璃凛 | 作成日時：2021年1月6日 14時
