37 ページ37
「初めまして〜安田です♪」
な？男やろ？
言わんこっちゃないとでも言いたげな表情で忠義がこちらに視線を向ける。
偶然なのかわざとなのか、安田さんはスカートを履いてあたしの前に現れた。
しかもそのスカートは、あたしの誕生日に忠義が脇に置いていたものと似ているような……(5話参照)
その格好とくっしゃくしゃに皺を刻んだ天使のように可愛らしい笑顔に、あたしは納得せざるを得なかった。
「にしても、おーくらはかわええ彼女捕まえたな〜
Aちゃん、おーくらと付き合うんは色々大変やけど、頑張ってな？」
「ヤス！余計なこと言わんといてー！」
忠義宅で、一人増えたメンツを交えてテーブルを囲む。
忠義が運んできてくれた唐揚げと餃子が山盛りになった皿にあたしと安田さんは手を叩いて喜び、いそいそと箸やら取皿やらを並べた。
百聞は一見に如かず、とはよく言ったもので、
忠義が好きになるようなすごくイイ女なんだと想像していた"ヨシコ"は今あたしの隣に座っていて、
可愛らしい顔にそぐわない、筋張った手腕とガッシリした肩幅、上下にウニウニ動く喉仏。
そもそも可愛らしいとは言ったけど顔もかなり美形。
、、うん、120%、いや200%、アイドルの佇まい。
「おーくら、オクラは持ってこーへんのー？」
「もぉその弄りはええて…」
「おーくら…？ん？オクラ…？おーくらがオクラ…」
「あははっ、Aちゃんも嵌ってもうた〜！
な、な、ええやろ？おーくらとオクラ！
って！！テーブルに膝ぶつけてもうた〜〜」
ガコン、と鈍い音を立てたローテーブルに恨めしそうな一瞥をやったあと、痛いよ〜なんて言いながら己の膝をさする姿は、話に聞いた通り、確かに見た目のみならず中身まで、天然、可愛い。
これは確かに、一部を切り取ってしまえば、女の子に感じられなくもない…いやむしろ、あたしよりずっとオンナノコだ…
「おーい、Aまでヤスに惚れんなよ！
ヤス、Aは俺のやからな！」
「Aちゃんまで、ってことはおーくらも俺に惚れとるってことやん？
わー、嬉しい！」
「ちょっと忠義！あたしと安田さんどっちが上なのよ！」
「何やねんこの茶番……」
何だか、こういうの、いいなあって。
こうやってわいわいと騒ぐこの時間は、これまでと何ら変わりない気がするけれど。
今気付いた、あたしは何かを押し殺しながら過ごしてきたから。
あたしは今、心から笑えている。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 328人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
渡璃凛(プロフ) - 雨さん» 細かいところは私のこだわりというかスタイルなので気にしないで頂きたいです。イモるというのは物怖じするとかビビるという意味です。続編は今のところ考えていませんがまたいつか機会があれば書かせていただきます。 (2021年3月1日 13時) (
レス) id: ca2c84b988 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 何度も続けてのコメントですみません。 続きがあるなら39からとかでも良かったのでは？と 思ってしまって｡｡｡ 何かすみません(>_<) (2021年3月1日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - またまた続けてのコメントですみません...。 最後に一つだけ気になったことがあるのですが｡｡｡ 物語38の後にお礼とお知らせ■作者よりの後も物語は 続きますが...。 何故そこでは物語の各題名に数字とか何も無く・だけ なんでしょうか？ (2021年3月1日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - また続けてのコメントですみません｡｡｡ 物語読みました。 物語は完結してしまいましたが...。 その後の2人が気になります。 (2021年3月1日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 続けてのコメントですみません(>_<) 物語読んでいて一つお聞きしたいことがあるのですが...。 ・ページ47のここの部分 自分で探そうにもいざ会ったら絶対イモるやろうから〜 この絶対イモるやろうから〜のイモるとはどういう意味なんでしょうか？ (2021年3月1日 0時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：渡璃凛 | 作成日時：2020年10月8日 17時
