たとえ向いてる方向が違っても【緑】

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緑 side


ずっと抱き締めたかった。

でも、出来んかった。


君はいつも、俺から一歩引いてるから。





あの日、見知らぬ女の家で目覚めた時、ほんまに焦って、俺がお持ち帰りしたんか？俺がお持ち帰りされたんか？ってなって。


でも俺は衣服をしっかり身に纏ってたし、彼女から聞いた事の顛末によれば、俺がベロベロになって彼女に付き纏っていたらしく。



完全に俺が悪いやん！！



という最悪の出会いを果たしたわけやけど

きっと俺は、酔った勢いとは言え出会った時からAに惹かれてた。




好きやのに、触れたいのに、

Aはいつも俺から一歩引いていた。


何度も、好きや、って言おうとしたのに、

ヘタレな俺はよう言われへんかった。


ただ、友達としてゲラゲラ笑ってるだけやった。




Aが俺に好きって言ってくれた時はほんまにびっくりした。

いつも一定の距離をとって、近づいてこようとせんやったAが、ほんまは俺のこと好きやったなんて。


やっと、Aに触れられる、触れていいんや、


そう思って、あの日玄関先で抱きしめようと歩み寄ったのに、彼女はそれを許さなかった。



何で？


俺も好きやのに、何で言わせてくれへんのやろ？

何で、俺も好きやって言う隙も与えんと俺から離れるんやろ？





違う。

伝えるチャンスは幾らでもあった。


俺がヘタレなだけ。


いつでも言えたはずの言葉を、俺に近付こうとせえへん君に、言うのが怖くて。



"言わせてくれへん"のやない。

"俺が言えへんかった"だけやった。



そんで結局俺は、両想いやって分かってもなお、Aにキツイ思いをさせた上に、『好き』って言葉さえ、先に言わせてもうた。



どうしようもない、ヘタレや。


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