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寝れば、朝は来る。
そりゃあそうだ、寝ている間にも時間は過ぎるのだから。
枕元に置いていた携帯の液晶画面を覗くと、午前6時という文字が浮かび上がる。
のそのそと起き上がってリビングに出ると、既に忠義は起きていた。
「あ、おはよぉ。よかった、ちゃんと帰って来とって。
……何が、あったん?頭、冷やしたん?」
「…頭冷やしてきた。大丈夫だよ。
朝ごはん、準備するね」
曖昧な笑顔で誤魔化して、洗顔と歯磨きを済ませてからキッチンに立った。
――よくよく考えたら何この状況?
新婚夫婦かよ!
抵抗なく泊めてしまうあたしもあたしだけど、ただの女友達の家に抵抗なく泊まる忠義も忠義じゃないか?
、、まぁ多分、あれだ。
初対面の時点で既に泊めてしまったから、お互い抵抗がないだけだろう。
だから、これまでも違和感なく忠義を家に泊めて、一緒に朝を過ごしたんだ。
適当な朝ごはんを準備して朝食を済ませ、遂にその時が来た。
あたしが仕事に行く前に、忠義をさっさと我が家から退散させるのは恒例行事だけど、こんなにも緊張するのは初めてだ。
「ほな、またな〜」
玄関先、靴を履いた忠義があたしの方を振り返ったとき
深く被った帽子から覗く、そのくしゃっと皴の刻まれた笑顔に、あたしの決意はまたも揺らぎかけた。
この笑顔を"友達"という立場でも堪能させてもらえるのも、それはそれで幸せだろう。
気持ちがぐちゃぐちゃになっていたって、忠義と友達としてつるんでいる時間は、楽しかったから、
このままでもいいかもしれないという考えがどうしてもよぎってしまう。
でも、もう今更引き返せない。
今を逃せばきっと、あたしはまたずるずると片想いを拗らせ続けるだろうから。
「忠義。」
緊張で少し堅くなってしまった声音に、ドアノブに手をかけていた忠義が少し驚いたように振り返った。
「ん?どうしたん?」
――この気持ちを伝えたら、この関係はどう変わってしまうのだろう。
そのまま?
縁切り?
まさか成就する?
いや、三つ目はないな……
何にせよ、友梨の理論で行けばひとまず伝えなければ始まらないということだから。
あとはもう、勢い。
「好き」
忠義の目が大きく見開かれたのに気付いた。
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渡璃凛(プロフ) - 雨さん» 細かいところは私のこだわりというかスタイルなので気にしないで頂きたいです。イモるというのは物怖じするとかビビるという意味です。続編は今のところ考えていませんがまたいつか機会があれば書かせていただきます。 (2021年3月1日 13時) (レス) id: ca2c84b988 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 何度も続けてのコメントですみません。 続きがあるなら39からとかでも良かったのでは?と 思ってしまって。。。 何かすみません(>_<) (2021年3月1日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - またまた続けてのコメントですみません...。 最後に一つだけ気になったことがあるのですが。。。 物語38の後にお礼とお知らせ■作者よりの後も物語は 続きますが...。 何故そこでは物語の各題名に数字とか何も無く・だけ なんでしょうか? (2021年3月1日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - また続けてのコメントですみません。。。 物語読みました。 物語は完結してしまいましたが...。 その後の2人が気になります。 (2021年3月1日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 続けてのコメントですみません(>_<) 物語読んでいて一つお聞きしたいことがあるのですが...。 ・ページ47のここの部分 自分で探そうにもいざ会ったら絶対イモるやろうから〜 この絶対イモるやろうから〜のイモるとはどういう意味なんでしょうか? (2021年3月1日 0時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渡璃凛 | 作成日時:2020年10月8日 17時