【歌い手】夢のようで、夢じゃない。

story.5／地元民 ページ6

イベントも終わり、帰路につく。


(楽しかったなぁ)


先程のサイン会でのこと、そして、イベントが始まる前の出来事…。
思い出すだけで胸が高鳴る。もうこれだけでご飯何杯もいけそうだ。


(あ、お腹すいた)


…ご飯何杯もいけそうとか考えていたら腹が減ってきた。
近所のコンビニに寄ることにしよう。


◆


「いらっしゃいませーセイコーマートへようこそー」


家の近所のセイコーマートに来た。
とりあえず、ホットシェフのカツ丼かなんか買って、ついでになんかおやつでも買って帰ろうと思っている。


(カツ丼カツ丼…)


なんとなく真っ先にホットシェフコーナーへ向かっていると。


「え…っ」

「〜♪」


そこには、なんと鼻歌を歌いながらお惣菜を探しているともくんがいた。


(なんでなの…いや、嬉しいけどさ、嬉しいけど…！！)


心臓が煩い。
今日一番うるさい。
まさか、こんなに家の近所で遭遇するなんて。


「「…あ」」


…目が、あってしまった。


「あ、あの…佐香智久さん、ですよね」

「さっきのイベントに来てくれた子だよね？」

「は、はい…！そうです！」


覚えていてくれたんだ…という感動。
とても嬉しくて、でも頭が真っ白になりかけてて。
声も手も震えている。


「え、どうしたの、寒いの」

「その、なんというか…緊張してて…。」


目が見れない。
緊張すると猫背になってしまう、私の悪い癖が出てしまっていそうで怖い。


「え、緊張しなくてもいいのに」

「しちゃうんですって」


心臓のバクバクはまだ止まらない。
胸が苦しい。


「あ、私お菓子も買わなきゃなので失礼しま…」

「僕もお菓子買う」


心臓が苦しいから逃げようとしたのに。
なんでたまたま用事がかぶるんだ。嬉しいけど。


「そ、その前にカツ丼取らせてください…」

「おっと、ごめんね、邪魔になってたよね」


私は、下段にあった出来立てのカツ丼を手に取った。

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