【歌い手】夢のようで、夢じゃない。

story.20／照れ臭い ページ23

なんだかんだで本日の授業はすべて終了。
定時制の午前部なので、授業はだいたい午前で終わるのだ。

私は、真っ先に部室へと向かった。


「こんにちは〜」

「あ、こんにちはー。」


迎えてくれたのは、部長のありさ先輩。
…みんなからは、"りっちゃん"と呼ばれている。
この部活では、先輩のことを"○○先輩"と呼ばずに、あだ名で呼ぶ…というルールがあるのだ。よって、私も部長のことをりっちゃんと呼んでいる。


「どうもー」

「どうもですー」


続いて部室に入ってきたのは、麗華ちゃんと鈴音ちゃんの二人。
相も変わらず、この二人はいっつもくっついている。

で、この部活の活動内容はというと、表向きはイラストを描いたりMMDでPVを作ったり、学祭でグッズを出したり…といった感じなのだが、実際はおやつやお弁当を食べながらゲームをしたりアニメやゲーム、漫画の話をしたり、キンプリ鑑賞会をしたり…といった感じである。

で、本日私は、完成させたPVのデータをりっちゃんに見てもらうべく、USBメモリを持ってきたのだ。


「りっちゃん、昨日完成させたMMDのデータ入れたUSBメモリ持ってきました」

「おおー、ありがとね」


りっちゃんは、自前のパソコンを開き、USBメモリを刺した。
そこからデータを学祭用のファイルにコピペして、再生。

そして、流れたのはDaisukeをあんスタの朔間零に踊らせたPV。


「AちゃんもうPV完成させたの！？早っ」

「わ、Daisukeじゃん！」


どんどん人が、りっちゃんのPCの周りに集まってくる。
…少し、恥ずかしい。


『〜♪』


軽快な音楽と共に、華麗なダンスを真顔で踊る画面の中の推しキャラ。
…とてもシュールである。


「流石Aちゃん、この歌詞の出し方はセンスいいね〜」

「あっ、ありがとうございます」


先輩から褒められた。
なんだか、自分の作った動画を褒められるのは照れくさい。
そう思った。

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