♪４６♪ ページ46
騙されてあげよう、と白い方を戻し、黄色い方を口にした。
酸っぱさよりも先に、甘さが口の中を覆い尽くす。やっぱり甘い。レモンというより、はちみつレモンだ。これは。
それでも何故か、嫌な気はしない。ひたすら甘いのに、吐き出そうとも思わない。
それは彼のおかげか。メルヘンチックで馬鹿みたいな考えが頭をよぎった。
だけどまあ、それでも別にいいかもしれない。
苦くも酸っぱくもない、偽物のレモンの味。それと、本番前にわざわざ会いに来てくれた赤い影。あの時ついてた嘘の意味の答え。
それが、体の片隅に隠れていた小さな不安を全てかき消してくれる。何も怖くないと、私に信じさせてくれる。
あの時。初夏のあの日。階段で彼に声をかけなければ、今の私はもっと違っていたのかもしれない。
最悪な出会いで、すこぶる人格がよろしくないと思っていた。
だけど今は違う。ハッシーの関係と私自身のこと。あの人がいたから変わったこと。たくさんある。
だから今日は、それを全て出し切ろう。部員が笑顔になれるように。私が、笑って彼に報告ができるように。
「つきちゃん！ 」
交差点で、いつもの笑顔が私を迎えた。
「おはよう、ハッシー」
「やっばーめっちゃドキドキするよ！ 頑張ろうね、つきちゃん！ 」
「もちろん」
私は小さくなったドロップの欠片を飲み込んで、贈り物を鞄にしまい入れた。
もう大丈夫。エネルギーチャージは万全だ。
ハッシーと二人で、立海の校門をくぐった。
校舎を覆う夏の空は、明るく青くどこまでも伸びて、私たちを見つめていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「テニスの王子様」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かるぴん(プロフ) - めちゃくちゃブン太大好きになりましたら！主人公も友達のキャラも好きです！素晴らしい作品をありがとうございました！ (2022年4月9日 3時) (
レス) @page50 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！！ハチャメチャに嬉しいです、頑張ります(´∀`) (2019年3月23日 23時) (レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます。めちゃくちゃ楽しく読むことができました!!これからも頑張ってください。応援しています!!! (2019年3月23日 22時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - とんでもないです^ ^ゆっくり書いて頂ければ幸いです。作者様のペースで、頑張って下さい！応援してます！ (2019年3月22日 21時) (レス) id: 949b3c86b7 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - りんごあめさん» ありがとうございます！！！めっっちゃくちゃ嬉しいです！！！後日談、出来たら書きたいと思っているのですが如何せん残りの話数が2話分しか残っていないもので……なんとか収めて書きたいと思っていますのでお待ちいただけたら嬉しいです！ (2019年3月22日 1時) (レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2018年9月11日 22時
