♪３９♪ ページ39
「ハッカ、もう一個もらっていい？ 」
苦し紛れに、私はそう言っていた。好きなだけ食えよ、と差し出された手にはまた一粒、真っ白な飴が乗っていた。
嫌いだった。でも今は嫌いじゃない。何だか、ないと私が不安になる。
冷涼と甘みが舌に染みる。何だか、それが私の安心材料になっていた。
「細けぇことは聞かないけどさ、お前らほんと頑固だよな。さっさと謝りゃいいのに」
「出来たら苦労してません」
「そういうとこが頑固だっての。俺も人の事言えねぇけど、話聞いてるとどっちもどっちって感じじゃんか。ひでーこと言ったら謝るのが常識ってもんだろぃ？ 」
「そうだけど……丸井くんはないの？ そういう、大喧嘩っていうか」
「超ある。昔の話だけど」
何でも、桑原くんとは今みたいになるまでにかなり喧嘩してきたらしい。
「今思うとかなりひでーこと言ってたわ。俺の足引っ張るなだの家のことあるから練習できねぇんだろだのスタミナくらいしか取得がねぇだの……」
「酷、最低」
「昔の話だよ！ そんなぶった切らなくても良いだろぃ！？ 」
「……でも、そこまで酷いこと言っててよく解消しなかったよね。私が桑原くんだったらとっくに愛想尽かしてると思うのに」
「さり気なくディスられてる気がすんのは俺だけか？ ……ま、その分謝ってきたし……良い悪い関係なく本音ぶちまけたってのもあるな。喧嘩って本音のぶちまけ合いだと思ってんだ、俺」
本音、というワードが引っかかった。意固地な所が嫌いだ、という言葉はハッシーの本音。……そこまで気が付かなかった私は、何なんだろう。
「お前さ、橋本に本音言ったことあんの？ 」
「え？ 」
「前にさ、俺に話してたじゃんかよ。あれ、まんま橋本にぶつけたことある？」
ドキリと、さっきまでとは違う意味で心臓が跳ね上がった。
私が思うハッシーへの言葉。話した記憶は、どこを探しても見当たらなかった。
「ねえだろぃ」
口ごもった私に、彼は言った。隣に視線を移すと、深紫の大きな目がこちらを向いて、優しく私を見ていた。
また、ドロップを無意識に噛む。弾けた甘みは、小さな苦味と一緒に私の舌に残って、笑っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「テニスの王子様」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かるぴん(プロフ) - めちゃくちゃブン太大好きになりましたら！主人公も友達のキャラも好きです！素晴らしい作品をありがとうございました！ (2022年4月9日 3時) (
レス) @page50 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！！ハチャメチャに嬉しいです、頑張ります(´∀`) (2019年3月23日 23時) (レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます。めちゃくちゃ楽しく読むことができました!!これからも頑張ってください。応援しています!!! (2019年3月23日 22時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - とんでもないです^ ^ゆっくり書いて頂ければ幸いです。作者様のペースで、頑張って下さい！応援してます！ (2019年3月22日 21時) (レス) id: 949b3c86b7 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - りんごあめさん» ありがとうございます！！！めっっちゃくちゃ嬉しいです！！！後日談、出来たら書きたいと思っているのですが如何せん残りの話数が2話分しか残っていないもので……なんとか収めて書きたいと思っていますのでお待ちいただけたら嬉しいです！ (2019年3月22日 1時) (レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2018年9月11日 22時
