♪３０♪ ページ30
何。何なの。私らしくない。
昼休み以降、どうも調子が出なかった。変な感情が胸の中につっかえて、それが私の行動全てを阻害する。
脳裏にただ残るのは、揺れた赤い髪と調子の良い声。私、こんなに褒め慣れてなかった？
気がつけば、私の意識の中に常にあいつが居座っている。気を抜けば溢れ出てくるあいつの記憶。どうして。何で。
経験したことのない感情に振り回されつつ、その日の授業は無事に終わりを迎えた。大きな疲労を抱えながら、私はハッシーを呼びにB組に向かった。
「ハッシー……」
「お！？ どったのさー、なんかめちゃくちゃ疲れてない！？ 」
「うん……なんか分かんないけど、めちゃくちゃ疲れてる……ちゃんと練習は行けるから、とりあえず練習行こ……」
「ほんとにぃ……？ 」
「き、桐月！ 」
がたん、と比較的大きな音と共に声が上がった。授業中、何度も繰り返されて離れなかった声。どこかで、心臓が微かに速く動き出した。
「……丸井、くん」
「よかった、部活前に会えて……あのさ、これ食ってくんね？ 俺苦手でさ」
広げた手のひらに乗っていたのは、白くてほのかに透明なドロップ。
何故彼がこんなものを勧めてくるのかはわからない。甘いの、得意じゃないんだけどな。
「ハッカじゃん、てかつきちゃん食べたことある？ 」
「ううん、ない……そもそも飴自体甘いの買ったことないし」
「だよな、でもこいつならお前食えると思ってさ！ 騙されたと思って食ってみてくんね？ 」
……この男は。何を考えているんだろう、練習前に飴なんか食べたらすぐに歌えないじゃん。噛めるまで小さくなるのも時間かかるし。馬鹿じゃないの？
「……そう。自分の嫌いなもの押し付けてくるのもどうかと思うけど」
でも、何で私は、あいつの手から飴を受け取っているんだろう。
「でもま、良いよ」
私はそう言って、白いドロップを口の中に放り込んだ。
喉を抜ける冷涼な香りと、明らかな人工甘味料の甘さ。いつも舐めてるのど飴とは似ても似つかない。
でも何でだろ。ちょっと美味しい。
……そうやって思う私の方が、馬鹿なのかな。
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かるぴん(プロフ) - めちゃくちゃブン太大好きになりましたら！主人公も友達のキャラも好きです！素晴らしい作品をありがとうございました！ (2022年4月9日 3時) (
レス) @page50 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！！ハチャメチャに嬉しいです、頑張ります(´∀`) (2019年3月23日 23時) (レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます。めちゃくちゃ楽しく読むことができました!!これからも頑張ってください。応援しています!!! (2019年3月23日 22時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - とんでもないです^ ^ゆっくり書いて頂ければ幸いです。作者様のペースで、頑張って下さい！応援してます！ (2019年3月22日 21時) (レス) id: 949b3c86b7 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - りんごあめさん» ありがとうございます！！！めっっちゃくちゃ嬉しいです！！！後日談、出来たら書きたいと思っているのですが如何せん残りの話数が2話分しか残っていないもので……なんとか収めて書きたいと思っていますのでお待ちいただけたら嬉しいです！ (2019年3月22日 1時) (レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2018年9月11日 22時
