page24「否定」 ページ32
「言わないで…!!」
それを遮ったのは紛れもないまふくんで。
その声で、言葉で、自身の次の言葉は喉から引っ込んでしまう。
でも、今私は
____何を言おうとしたの…?
ぼーっとしていると書きたい文字と違う文字を書いてしまう時みたいに、心が誤作動を起こしたかのように口が動いたのだ。
続きの言葉なんて私自身知る由もない。
でも、そんな無責任なことこの場にして言える訳がない。
「知ってるんだよ、前々からAちゃんの気持ちは…」
自分を落ち着かせる為か、クシャッと彼は自身の前髪をかきあげる。
そこから覗く瞳は私の知らないものを映していそうで、何処か恐怖が胸に渦巻く。そんな私を構うことなく「だから」と彼は続けた。
「その気持ちはまだ、言葉になんてしないで…!」
なんて、返すのが正解だろうか。
『うん、わかった』?
『そんなことできない』?
彼は私に何を望んでいるのだろうか。
ぐるぐる考えが巡って、そのままベッドに倒れそうな感覚になる。
まふくんは、逸していた目を私に向ける。
私はそれに応えることができずにベッドの白いシーツを見つめる。
そんな時計の針の音しか響かないここで、今、まふくんが小さく深呼吸したのがわかった。
「まだ、その気持ちに答えをださないでいてくれる…?」
優しく、赤ん坊を甘やかすかのように。
熱を纏い、何もかも融かすように。
心地のいい声が私の鼓膜を擦り抜ける。
今、ここはふたりぼっちの世界だと言われても信じてしまう程、私はまふくんに神経を走らせていた。
「答えなんて、ないよ…」
震える声だった、本当に。
出そうとして頑張る高音を喉から捻り出したかのような、そんな声。
「出したくて出せるものならこんなに悩んでなんかないよ…!」
シーツを握っていた手は汗ばんでいて、気持ちが悪い。それでも、気持ちを奮い立たせるように再度強く握る。
____私だってそんな鈍感じゃない。
記憶はなくたって、まふくんの言葉が私に何を伝えたいかぐらいは理解してるつもりだ。
だからこそ、私がここで頷いたら駄目なんだ。
彼の気持ちに応えれる応えれないって話じゃない。
全部、赦されて、
全部、甘やかしてくれる
そんな優しい彼だから。
「まふくんは、何もない今の私の方が好きだって言いたいの…?」
____このまま都合よく話を終わらせることなんて出来ないんだ。
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雨中と猫。(プロフ) - ちょこさん» うわああああんすみませえええええんがんばります (2022年2月10日 2時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2021年12月20日 22時) (レス) @page49 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - いちごポテトよーぐるとさん» 返信が遅くなりすみません!めちゃくちゃ嬉しいです、現在別作品「笑えないって」リメイク更新中ですのでもう暫くお待ち下さい!! (2021年12月9日 18時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
いちごポテトよーぐると(プロフ) - 色々な感情で涙が……とても面白かったです…。更新待ってます、! (2021年8月17日 0時) (レス) id: 33ba1212be (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - 眠夢_さん» うわああああありがとうございます!!今メインで書いている「笑えないって」という小説のリメイクを行っていてそちらが落ち着き次第こちらも更新しようと考えております!絶対完結はさせますので何卒ー!! (2021年8月13日 3時) (レス) id: 6b41ff11b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨中と猫。 | 作成日時:2017年4月29日 2時