8話 ページ9
外へ出たひとらんは置き手紙に書いてあった様に家の前に1匹の珍獣を見つける
大きな体に6本の足、下から突き出ている牙 不機嫌そうな目潰れた鼻…モウムだ
「モウムは相変わらず不細工な顔だな」
不細工と言われた事に不満があるのかモウムはウガッと鳴く
その様子にひとらんは笑みを浮かべモウムの頭を軽く撫で話す
「ごめんごめん怒るなよ、我々国まで宜しくな」
…ンガッ
まるで仕方ねぇなと言う様に返事をしたモウムの背にある鞍に跨る
「さて…イーアルの森はどうやって抜けるんだ？」
元々部外者は立ち入れない森、どうやって抜けるか分からない状態だが…
…ンガ！
「おお？！どこ行くんだ？…お前出口が分かるのか？」
ひとらんの言葉に返事をせずに淡々と森を歩くモウム
そんな彼？(彼女？)の行動に土地勘の無い自分が出るべきでは無いと思ったひとらんはモウムの背に揺られていた
＿＿＿
＿＿
＿
森の中は木々が折り重なり薄暗く朝露に濡れている、草を踏みしめる音とモウムの鼻息が聞こえるだけだ
その中、モウムは気にせず進む
「…結局ラルドに挨拶せずに来ちまったな…なぁお前さ、ありがとうってあいつに伝えてくれね？我々国が見えたら降りるからよ」
……ンゴッ
「ん、ありがと」
モウムは面倒くせぇなと言う雰囲気を出しながらもひとらんの申し訳なさそうな表情を横目に見て返事をする
その時
ガサ
「！…なんだ？」
草が不自然に揺れ動いた
その事を合図にしたかの様に周りの草むらもガサガサと音を立てる
足を止めたモウムにひとらんは草むらを警戒する
ガサッ！
大きな音を立てて飛び出して来たのはゴブリン
それも10匹位はいる
「チッ…面倒くさいがやるしかねぇな」
刀の柄に手を掛けるひとらん
だが唐突に笛の音が鳴り響く
ピィー
その音を聞いたモウムがゴブリン達を無視する様に走り出す
「お、おい！止まれ！！後ろから襲われるぞ！」
ゴブリン達の投擲を警戒する為後ろを振り返ったひとらんの目には、次々と倒れて行くゴブリン達が見えた
急所となる場所に矢が深々と刺さっており絶命していると分かる
ゴブリン達の後ろを遠目で見ると等身大程の大きな弓を引いているラルドに気付くひとらん
「！…ラルド！ありがとう！」
大声で感謝の言葉を言いながら森を抜けて行く
『此方こそ楽しかった』
＿_
モウム
珍獣
力が強く足が速い為移動の際などに使われる
ゴブリン
悪事を働く者
集団で行動する
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作者名：°.雨の子.° | 作成日時：2019年10月2日 11時
