翠玉の守護者 (ページ5)

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4話ページ5

『待たせて悪い…？』

食事を温め直し再び部屋に入ったラルドだが

「…」

当のひとらんは開いている窓から外を眺めておりラルドが入ってきた事に気付いていないようだ
その様子にラルドはそっと近寄り声を掛ける

『…眺めがいいだろ』

「！…あぁ」

ひとらんの目の前には豊かな緑に囲まれた小さな村があった
草花は風を受け薫りを振りまき、陽を浴びた木々は葉を上へ上へと伸ばす
水路が所々にあり水が流れ涼しげな音を奏でる
獣人族の子供達がはしゃぎ回りそれを大人達は笑顔で見守る

見える範囲で分かる事は只 "平和" だと言う事のみ

「…世界中を探しても此処まで平和であると感じられる村は無いだろうな」

ひとらんはぽつりと呟く

『外の者達は考えもしないだろう、イーアルの森の中にはこんな豊かな村があるなど』

「…今更だが本当にイーアルの森なのか？」

『疑いたくなるのも分かるが本当だ』

「驚いた…」

『さぁ、外ばかり眺めて無いで食事を取ろう話はそれからでも出来る』

外の光景をまじまじと見るひとらんにラルドはそう言ってトレイに乗せてある器とスプーンを渡した
自分の村を褒められたからか彼女の尾は嬉しそうに揺れる

『明日、体調が良ければ外に出てみるか？』

「ん…いいのか？」

スープを飲んでいたひとらんは驚いた様子でラルドに顔を向ける

「イーアルの森には部外者は立ち入れないと聞いたが…」

『ひとらんらん、お前は森に認められている』

「？」

『確かに部外者は入れない、だがごく稀に森へ入って来れる者がいる…』

「…それが俺だと？」

ひとらんの問い掛けにラルドは頷きで答え返す

『森の主に認められぬ者は入っても直ぐに入口に戻る、例えマグレで入れたとしても私やアイがいる…村は愚か、民に会う事も出来ない』

「…」

『だがお前は認められた、だから生きている』

「俺を追って来た奴等は？」

『認められていない者達は殺す』

「そうか…何を基準にして認められるんだ？」

『それは森が決める事だ』

「不透明なんだな」

『ふふ、そう思われても仕方ない』

ラルドの話になんとも言えぬ表情を浮かべるひとらん、森に認められたという事にしっくりと来ないらしい
そんな彼の様子に笑みがこぼれる

相変わらず外からは子供達の笑い声が聞こえた