世界は箱庭 (ページ1)

今日:5 hit、昨日:23 hit、合計:2,852 hit

プロローグページ1

楽しい休日になるはずだった。
両親も弟もみんな笑っていたはずだったんだ。

なのに、この状況はなに？

なぜ母さんは頭を赤く染めて倒れてる？
なぜ弟の泣き声が響いている？
なぜ父さんの姿が見えない？

なぜ私はうつ伏せのまま起き上がる事が出来ない？

答えの出ない疑問がとめどなく溢れてくる。
ただ分かるのは酷く両腕で熱いこと、生暖かい水によって身体が濡れていくことそして、母さんから出る赤色が広がっていることだけだった。

身体を起こし母さんの無事を確認したい。
弟に大丈夫だと声をかけたい。
ここにはいない父さんを探しに行きたい。

やりたい事が頭の中を駆け巡る、しかしこの身体はピクリとも動いてはくれない。
声を出そうにもか細い呼吸音しか出せない。
小さな音を拾おうと耳に意識を向けてもキーンという耳鳴りによって音を拾う事が出来ない。
瓦礫の中、霞み行く視線の先にただただ広がっていく赤色を見つめる事しか出来なかった。

弟の泣き声が響いている中、私の意識はゆっくりと闇へと沈んでいった。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿
『ん…』
目を覚まし、まだ正常に動いてくれない頭で白い部屋を見回すとここは病室の１つだと言う事が分かった。

『…はぁ』
息を吐き出しながらなんとなくシミ１つない白い天井を見る、危険な場所から安全な場所に居るからか家族も無事だと確信のない答えに行きつくのは仕方ない事かもしれない。
仮に家族のもとに行こうとも身体が鉛の様に重く起き上がる事すら出来ないのだから無理な話だ。

『ふぅ…』
面白みのない天井を見上げてどのぐらい経っただろう、誰も訪れず変わり映えの無い光景はどこか孤独感を刺激していく。
その感情から目を背ける様に瞼を下ろした。

『っ！？』
その時、酷い頭痛が起こる。
頭が割れるかの様な痛みの中記憶にない場所、人、風景が浮かんで来た。
いや"記憶にないが知っている"モノだ。

家族といる所、友達と遊ぶ所、怒って泣いて笑っている所、様々な場面が浮かんでくる。
その中にテレビに映る炎を纏ったサッカーボール

弟や私が好きなサッカーの必殺技だとすぐ分かった。

だが、有名な人は誰も映っておらず1人の男の子を映している。よく見てみるとそれは試合中継やニュースなどでは無く"アニメ"

背中に冷たいナニカが流れた。

もしかしたら[ここは何もかも作られた世界]かも知れない