16話 ページ20
夕日によって辺りは橙色に染まっている中、河川敷には染岡が1人ゴールに向かいシュートを放っていた。
「はぁ、はぁ…もう一度だ！」
ゴールの周りにはポストによって弾かれたボールが転がっている。
「おらぁ！」
怒号と共に放たれたボールはフワリと受け止められてしまった。
「っ！？」
『やぁ染岡君』
「っ…雅、何の用だ。練習の邪魔だ、退け！」
険しい表情で怒鳴る染岡、そんな声を無視して近づいて来るAに苦い顔を浮かべる。
「なんだよ」
『焦って打っても意味ないよ？』
「五月蝿え！俺の勝手だろ？！」
『なんで僕や豪炎寺君と比べるんだい？』
「っ…せぇ」
染岡の口調に怒気が混じる
『君じゃあ豪炎寺君にはなれないよ？勿論、僕にもね？』
「…るせぇ」
『なのに、なんで焦るんだい？』
「五月蝿えって言ってんだろ！！」
『っ！』
我慢の限界に達したのか顔を上げた染岡はAの左頬を殴る。殴られた勢いに倒れてしまうが染岡は、興奮したままだ。
「お前に何が分かる！俺の気持ちも知らずにズカズカと！！俺は…俺はな！雷門イレブンのFWなんだよ！！ポジションもはっきり決まってないお前や部員じゃない豪炎寺とは違うんだ！！俺が点を決めなきゃいけないんだ！…くそっなんで…」
『…そうだよ、違うんだよ』
「っ！てめぇ！」
『君は君だろ？』
「…あ？」
倒れたままのAの胸ぐらを掴みもう一度殴ろうと右手を握るがAの声に腕が止まる。
『君は染岡竜吾…そうだろ？』
「それがどうした！！」
『じゃあなんで僕や豪炎寺君になろうとするんだい？』
「っそれは」
『シュートを決めたから？』
「っ…」
『確かに1点を取ったよ。でも、それで雷門イレブンのFWが変わるのかい？…違うだろ？』
「…」
『君自身が言ってたじゃないか。雷門のFWは俺だって、なら焦る必要無いよ。』
「でもな！」
『染岡君、君は1人で試合をしてるのか？』
「っ！」
『ちゃんと仲間がいるだろ？』
Aの言葉に胸ぐらを掴んでいた手はいつのまにか離れていた。
「でも、俺が点を決めないと試合には勝てない」
『そうだね、だからって闇雲にシュートするのは違うよね？…行き詰まった時は僕や皆を頼ってよ…仲間だろ？』
「！」
ハッとした様子でAを見るといつも微笑んでいる顔に悲しみの色が見えた。そんな顔をするAに染岡は
「…っ、なぁ雅…頼みがある」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨の子 | 作成日時：2019年4月17日 16時
