ドラゴンとエルフ【オリジナル】

湧いてくる ページ9

昨日、人間を殺したばっかりなのに

今度はいっぱいの人がやってきた。

もう怖がって来ないかと思ってたのに！

あんなにいっぱいだったら見つかっちゃうかもしれない。

どうしたらいいのかな…


「どうした、そんなにウズウズして」

『あ、ドラさん。人間がいっぱい来たから…』

「ああ…そりゃ人が殺されてたら見に来るわな…」ボソ

『？人って殺されるといっぱい来るの？』

「…ああ…そうだ」


「まるで湧いてくるみたいにな」と呟いたドラさんの顔は曇っていた。

私の耳はとても良いらしい。数キロ離れていても聞こえるのはエルフの特質なんだそう。

だから話し声とかもすこーしだけ聞こえるの。

なんで人間は皆と仲良くできないの…？

仲良くすれば楽しいのに…虫にびっくりして殺そうとしてるのも見たことある。

虫さん…悪いことしてないのに…人間は皆と仲良くしないの？

今ならきっと皆仲良くしてくれるよ？

なんで殺しちゃうの？

なんで捕まえちゃうの？

なんで“けんきゅう”しちゃうの？

なんで妖精さんとかとも仲良くできないの？

ねえ…なんでなの？


「…さっきから色々考えてるみたいだが、考えるだけ無駄だ。人間は俺たちを殺そうともする。捕まえようとも仲良くする気もない。人間はそういう生き物なんだ」

『で…でも‼』

「でも、なんだ？人間はな、昔俺の顔に傷を残した。もう一生治らねぇもんだ。人間と仲良くしようだなんて無理な話なんだよ」


そう言ったドラさんの顔は憎しみと怒りと呆れが混ざったような、複雑な顔だった。

そんな顔を見て私は涙が溢れるように泣いた。

泣き止もうとしても涙は止まらずに出てくる。

人間は確かに悪い。ドラさんを殺そうともしたから。

でも、私達と仲良くしたい人間もいるかもしれない。

悪い人間だけを殺しちゃったら人間と仲良くできるかもしれない。

でも…そんなこと無理。私は弱いし何にもできない。


「あれ？また喧嘩してるんっすか？」

『うぅ…どねーさんん…にんげんって…ほんとにわるいのかな…いいにんげんっていないのかなぁ…』

「あぁ、そういうことっすね。ボスは昔、Aちゃんと同じく人間と仲良く出来ないか考えてたんっす。でもその後、とても強い軍隊という大勢の人間と一匹で戦って顔に傷を負ったんっすよ。それ以来人間が大っ嫌いになって…そういうことっす」

「昔のことなんて忘れたがな。だけど人間のことは大っ嫌いだ」

お知らせ→←ドラさんの傷

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す