惑わせる彼【紫】 (ページ10)

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ある程度のピークを越えて、お客さんの波も落ち着いた頃。

『渡辺君。私これから店長に頼まれた作業してるからレジ離れるね。』

渡辺「は？お前だけバック下がるの？ずるいじゃん」

『・・・誰かさんが描いたポップのキャラがひどいから描き直しするんですけど。』

渡辺「は？俺の犬卵が！？」

うん。とてつもなく絵がへｔ・・・
独創的な渡辺君が作り上げたポップは個人的には好きなんだけど、
さすがに卵コーナー店頭には置けないかな。

『まぁまぁ。私は結構好きだよ、渡辺君のイラスト。』

渡辺「まぁじで？？」

じゃあ特別に描いてやんよAのためにー、なんて言ってる。

おい。渡辺。お客さん減ったからってルンルンでレシートの裏側にお絵描きを始めるな。
しかもまた犬卵だし！！！！
どんだけお気に入りなの！？

『あのさ、渡辺君。今レジの担当なんだよね？』

・・・・・・だめだ。この五歳児お絵かきに夢中だ。
私はそんな彼を横目にそっとバックに引き下がった。

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店長「それじゃあ皆さんお疲れ様。学生二人気を付けて帰ってね。」

全員「お疲れ様でしたぁー」

今日のバイトが終わった。うちは平日は閉店が速いので21時には帰れる。

渡辺「ねぇA、」

『なに？渡辺君』

解散後、なぜか彼に呼び止められる。
すると彼の手から一枚の紙切れが。

『ん？何この紙』

渡辺「さっき、俺の絵好きって言ったろ。だから。」

不器用に渡された紙切れには、あの犬卵が何個も描かれていた。
さっきから、練習してたのかなこのキャラを。(笑)

『渡辺君ありがとう。やっぱ私このキャラ意外と好きだよ笑』

なんかこの犬卵。憎めないしちょっと好きなんだよなあ。
それに描いた本人も相当気に入ってるらしいしね

『・・・・・だろ！！！！！！！』