惑わせる彼【紫】 (ページ24)

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連れ出さないでページ24

無邪気な顔で私を引っ張って走る先輩の背中を見つめながら、
こんな景色に二人きりでいることの非日常さを実感していた。

この人は今、ここで生活してんだなぁ。

深澤「ハイ着いた！ここが俺いっつも使ってる席でー、窓近いからポッカポカなの」

『走りすぎですって・・・。あーしんど。』

ここが、いま深澤先輩が過ごしている環境
日当たりが本当に心地よく、ご飯を食べた後だとここの席は眠くなってしまいそう

『中学生の時も。ですよね』

深澤「え？」

『あの時からいつも、深澤先輩は窓側の席ですよね』

初めて中学三年生の、上級生の教室に足を運んだ時の記憶
少し昼休みの終わりごろに行ったから人もまばらだった中で、
誰よりも窓際の席で外を見つめている彼

本当にカッコよくて、惹かれていた

深澤「・・・ほんっとAは俺の事好きだねぇ。」

『ふふっ。そりゃあよく見てましたから。』

頭をポン、と触ってあきれるような顔で私を見つめてくる彼
絶対に忘れないあの頃の記憶は、きっと何をしていても彼を思い出すトリガーになってしまう

深澤「ここだと、たまに先生の視界から外れるから結構いいのよ。でそっちがさっき会った結城が良くいる席でー、そっち側にはあんま人いねぇんだよなー」

楽しそうに授業あるあるやコツを私に教え始める。
嬉しいけど、今はあまりほかの女性の名前は聞きたくないんだよなぁ

『・・・いまは。』

深澤「ん？」

『今は、ほかの人の名前は、聞きたくない、です』

どうしてもいまはあなたの口からほかの人の名前
お願いだから言わないで。

深澤「そっかぁ。じゃあこっちおいで」

窓側の自分の特等席に座ってから、私を隣の席に招く。
言われるがまま隣の席に座って講義室を見渡すと、
視点が変わってこの先輩の過ごしている環境に参加できているような気分になる

『なんだか。不思議な気分』

深澤「俺ら学年違うし、隣で授業なんてなかったもんねぇ。」

深澤「でもさぁ。今は、一緒だよ？ゎら」