行き合ひの空【SVT】 (ページ1)

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さっと短く吹いた風が首筋をかすめ、体の芯から身震いする

これだから目が覚めてもなかなか起き上がれないのだ

胸元までずり落ちた布団を頭まで引っ張り上げる

冬はいつになったら終わるのだろうか

もう一度微睡みかけた私の脳内に、カンッという乾いた音が響く

木と木を打ち合わせたようなその音はきっと…

『シュアだっ！』

ばっ、と勢いよく飛び起きて窓の板戸を上げると中庭で稽古をしている人影が見える

数人の少年たちの中でもひときわ目を引く美形の少年

すらっと細身の体は白い肌と相まって見るからに貧弱そうな彼は、至極嫌そうな顔で木刀を構える

王である彼の父は透き通った金髪であるのに対し、彼は母譲りの黒髪だ

そんな黒髪をなびかせて勢いよく木刀を振りかぶるものの、簡単に木刀は払われて倒れ込む彼

「やっとお目覚めですか」

残念そうにジス様を見つめていると聞き飽きた声が後ろから聞こえる

『いうほど寝坊してませーん、そういうホシこそ朝稽古は不参加ですか～』

「お前の相手してると他の奴の稽古にならないから来るなって師範に言われたんだよ」

振り返りながらそう言うといつの間にか正装に着替えたホシが不機嫌そうに立っていた

「っていうか、いい加減ホシって呼ぶなよ、もう成人の儀も終わったのに」

『14歳と15歳の間に何が変わったって言うのよ。そんなこと言うならそっちだって敬語使ったらいいじゃない』

「承知いたしました。ジュンチャン様、お早くご準備を」

『…最低』

私がジュンチャンと呼ばれるのが嫌だって知っているくせにあえてそう呼んだホシを睨みつける

父上は私が生まれる前から待望の第一子は男だと決めつけ、ジュンチャンという名を付けた

この国では貴族と王族のみ名字が存在し、生まれた時にいただく正式な名がある

しかし、15歳で迎える成人の儀が終わるまでは幼名として仮の名で呼び合うのが通例だ

物心ついた時から共にいるこいつ、ホシは私の専属護衛官をしている

本名“クォン・スニョン”

私を含め王位継承権を持つ人間の専属護衛官はたいてい上位貴族から選出されるが、下位貴族であるクォン家の出身である彼は王宮内でも規格外な存在だ

ホシの剣術の腕は幼いころから師範を打ち負かすほどで、父上がそんなホシを護衛官に選んだという訳

「ごめん…」

『別に』

どっちにしろ二人きりじゃない時はそう呼ばれるしかないのは分かっているから

『行こうスニョン』