【東海オンエア】邪道な。

毒占欲_りょう(※) ページ8

※自傷行為の表現があります。苦手な方はブラウザバックを推奨します。

*

付き合うとか付き合わないとかどうでもいいから、一番好きになったひとの頭の片隅に、わたしの居場所が欲しい。
すぐに忘れられるくらいならわたしは苦くて、鋭く痛い思い出になりたい。
君が微笑む屋上からわたしは飛び降りる…………。


なんて、嘘だけど。
そんな、りょうのために死ぬ勇気もなければ、りょうの隣に行くのもびくびくするわたしだから、結局のところわたしはりょうのことが好きじゃないのかもしれないと少しだけ思う。

忘れないなんて嘘だ
君はわたし以外に何人いるの
わたしには君しかいないのに

「……またやったの」

静かに、困ったように微笑むりょうが、わたしの左手首をそっと撫でる。
煙草の押し付けられた痕、痣、噛み跡、そしてリスカの痕。
治らない傷たちの中に際立って赤い線が長く、ひとつ。
わたしの左腕は母のストレス発散のやり場だった。そしてその後わたしのストレス発散の行き場になった。

「うん」

ゆるく解いた包帯をまたきつめに巻いて、痛々しそうな表情をりょうが作る。

「なに？」
「……ん？」
「なんでそんな顔すんの」
「痛そ」
「痛いよ」
「なんで痛いのにするかなあ」
「生きてるって思うからかなあ」

なんか、当たり障りのないことを言ってしまった。
ぐちゃぐちゃの左腕と対照的な綺麗な右腕も、わたしがわたしたる所以。
左腕は皮膚が盛り上がって、皮膚が皮膚じゃなくて、右腕は本当にまっさらで、血管が見えるだけで、本当にこれ両方わたしの腕？ ってくらい。

「わたし、死にたいんだ」

きゅ、と「まだ」傷のない右腕を抱く。

「そのうち右腕も傷つけて、誰もわたしを醜く思って、そんで死にたい」
「だめだよ」
「……りょうはどうしてわたしが死ぬのを嫌がるの？ わたしのこと、好きじゃないくせに」
「好きだよ、友達として」
「そんなのいらない」

わたしはりょうの頭の片隅に居場所があればいい。

りょうはわたしのことを思い出して少し痛みを感じればいい。

りょうの隣なんか、望まない。

「……なにして欲しいの？」

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