ネイビーブルーの憂鬱

5.相手と ページ5

「なあ、」
「ん？」
「国語準備室ってどうやっていけばいいと思う？」
「……は？ 教室出て北校舎の……」
「場所じゃねえよ、行く口実」

としみつに聞いたのは間違いだったかもしれない。
なんで行きたいん？ と盛大に頭にハテナを浮かべるとしみつに、「いいサボり場所なんだよね」と説明する。

「国語の先生A先生以外職員室にいるし」
「A、って現文のAせんせー？」
「そー」

ふうん、ととしみつが俺を見て、にやにやする。てかA先生のこと名前で呼んでんの？ うざすぎ。

「すけべなことする感じですか」
「あの人彼氏いるから」
「なんでそんなん知ってんの?!」

あ、言っちゃダメな感じだった？ いや、別に隠してる感じでもなかったよなあれ。

「えー、あの人美人じゃん、狙ってるやついっぱいいるのに」
「知らんわ」
「えー、A先生の彼氏イケメン？」
「知らんわ」

としみつがポンコツ発動してるので、諦めて手に持った「高校漢字」の副教材をぱらりとめくる。

「質問の体でいいのかな」
「それいいアイデアだな」
「それはアイデアとかじゃなくてそれは共通の意識のつもりで他になんかあるか聞いてたんだけど」
「ええ」

まあいいや、とひらり、漢字の副教材を振って、帰りのショートホームルームが終わったと同時に国語準備室に向かう。



「A先生」
「福尾くん？ 今日はなんか頼んでたっけ」
「質問しに来た、体でサボりに来ました」
「もう、サボり場所じゃないんだけど」
「ふふ」

A先生の机に手を置いてA先生を見ると、上目遣いで「なに？」と聞いてくる。やっば、なにこの人かわいすぎん？

「で？」
「なにが？」
「話してくれる気になりました？ 泣いてた理由」
「んー、気になんの？」
「なります」
「…………」

諦めたようにふう、と息をついて、A先生は口を開く。

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