13.指輪も ページ13
じゃあ、とゆめまるとジョギングに戻る。
A先生、あれ独りで買いに行ったのかな……、あんな顔さして、婚約者はどんな心境なんだろ。
「Aせんせーさー」
「ん？」
「指輪してたね、結婚相手どんなひとだろ」
「ああ……」
「A先生綺麗だからさ、相手もイケメンやんね、たぶん」
見たいな、なんてゆめまるが言うから、
「いって！ なんで！」
軽く小突いておく。
「あ、そろそろてつやのレースじゃん？」
「あ、ほんとだ、戻ろっかー」
「うん」
「そういやさー」
「うん？」
「A先生大会に誘ったのりょうくんなの？」
「ん？ ああ、うん」
「なんで？」
なんで？ なんて、決まってる。俺の独りよがりだ。俺が、A先生に応援されたら、嬉しいから。
「なんとなくかな、最近ちょいちょい喋るから」
「……へえ〜」
なんか妙な間に、気づかれたかな、と思った瞬間にあ、とゆめまるが携帯を取り出す。
「彼女からの電話〜、出ていー？」
「ああ、どうぞ……」
もしもし？ と言う声がいつもより甘くて、ゆめまるってこんなんだっけ、とぞわっとする。
だいたいこいつ彼女変えすぎ、なんで全員と何もなかったみたいに喋れるんだか。
「……え？」
「ん？」
「え、どこどこ！ 迎え行く！」
あ、ゆめまる彼女来たんだ。
手をひらひら振って行け、と合図する。
さんきゅ、と小さく呟いてゆめまるが逆方向に小走りで駆け出した。
あ、てつやのレース、いつだ？
ばたばたと応援席に戻ると陸上部のひとたちがもう固まって応援準備ができていた。
「りょうせんぱーい！ もうすぐですよ！」
後輩のマネージャーがぴょんぴょんと跳ねながら俺に手を振る。
わあわあと陸上部のメンバーがてつやせんぱーい！ てつやー！ と準備をしているてつやに声をかける。その中にじっとトラックを見つめるA先生。
「ゆめまる先輩は？」
「彼女迎え行った」
「え、ゆめまる先輩の彼女来てるんですか」
「そーらしー」
そーいや、この子と仲良い選手の子がゆめまると一瞬付き合ってたな、と思い出す。何人くらい前？ 2人くらい前かな？
「無神経だねえ」
「そう、ですね……」
ゆめまるの元カノはアップでも行ったのかな、いない。
あ、はじまる。
『on your mark』
てつやとそのレースの人たちがスタートラインに立つ。
ピストルが、音高く鳴る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星乃(プロフ) - カオルさん» ほんとですか！ ありがとうございます。忙しくてなかなか更新していないのですが、是非これからもよろしくお願いします！ (2019年2月19日 7時) (
レス) id: cfcc689b43 (このIDを非表示/違反報告)
カオル - 尊すぎませんか、この小説！！毎話続きが気になってドキドキしています。気づいたら、りょうくんの応援してました( 〃▽〃)更新楽しみにしております！ (2019年2月19日 3時) (レス) id: d8ce782270 (このIDを非表示/違反報告)
星乃(プロフ) - 地雷屋さん» コメントありがとうございます。ネタバレではないので大丈夫ですよ◎才能とかはないのですが、そう言っていただけて嬉しいです、これからもよろしくお願いします (2019年2月18日 7時) (レス) id: cfcc689b43 (このIDを非表示/違反報告)
地雷屋(プロフ) - この小説本当に好きです。お話一つ一つのタイトルが集まって凄い事になってますよね。気付いた時1人で悶絶しました…作者様の才能、深く尊敬致します。このコメントがネタバレなどで問題になるようでしたら、即刻削除なさってくださいね。これからも応援しております。 (2019年2月18日 1時) (レス) id: 4668e73e56 (このIDを非表示/違反報告)
星乃(プロフ) - まぶたさん» コメントありがとうございます。忙しかったりして更新はまばらになりがちですが、気長にお待ちください〜。これからもよろしくお願いします！ (2019年2月11日 7時) (レス) id: cfcc689b43 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星乃 | 作成日時：2019年1月12日 20時
