12.しなよ。 ページ12
「……ん〜」
「どしたのりょうくん、ソワソワして」
ゆめまるがにこにこしながら応援のベンチでひたすらにソワソワソワソワしている俺に声をかけてきた。
「ソワソワしてる」
「見ればわかるわ」
ファイトー! と叫ぶ声が聞こえる。てつやがアップから戻ってきて、2人でなに話してんの! と横から覗く。
「……ん〜」
今日来るかなんか聞いてないしな。あれから何度か国語準備室は覗いてA先生と喋ったけど、流石に大会前に私情でサボるわけにいかなくてそそくさと出て行く日々が続いていた。
うーん、困った。
こんなにソワソワしてるのは良くない。
「走ってくる……」
俺のレースは午後だからまだいいけど、落ち着かなくて、ふらりと立ち上がると同じく午後と明日にレースのゆめまるが「俺も〜」と俺についてくる。
「おいお前ら俺の時には戻れよ! 応援しろよ!」
「はいはいわかったよ」
てつやがゴチャゴチャ言ってるけど振り切って会場の周りをジョギングしだした。ジョギングったって、別に会話できる程度だけど。
「……で〜? なにソワソワしてたん」
「うーん」
としみつにはバレたものの、他の人に言うべきでないなと思わずにはいられない恋心をゆめまるに言うか、どうか……。
「いやなんでも」
「えっ、じゃあ不調?」
「ん〜、そう言うわけでも」
自分の靴に落としていた目線をそっとあげる。
「あ」
「ん? あ、あのひと」
A先生。
見にきてくれた。
「喋りに行こうぜ」
ナイス、ゆめまる! 心の中でガッツポーズしながら「いいよ」なんて澄ました返事をする。
「Aせんせー!」
「A先生」
おい待てゆめまるまで名前呼びかよ! まじかよ!
俺普通の生徒より劣ってるんじゃ……。
「あ、福尾くんとゆめまるくん」
「え、ゆめまるお前名前で呼ばれてんの?」
「呼びやすいから」
くすりとA先生が俺を見て笑う。
「陸上部の先生に聞いたら、教えてる子がいっぱいいたみたいだから来たの。誘ってくれてありがとね」
口もとに当てている左の、
薬指。
きらりと光る、
……ああ。
「俺は午後なんですけど、いてくれます?」
今までなかったそれに動揺して、いつもよりへらり、と笑う。
「もちろん」
その笑顔が嬉しくて、すごく、
苦しい。
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星乃(プロフ) - カオルさん» ほんとですか! ありがとうございます。忙しくてなかなか更新していないのですが、是非これからもよろしくお願いします! (2019年2月19日 7時) (レス) id: cfcc689b43 (このIDを非表示/違反報告)
カオル - 尊すぎませんか、この小説!!毎話続きが気になってドキドキしています。気づいたら、りょうくんの応援してました( 〃▽〃)更新楽しみにしております! (2019年2月19日 3時) (レス) id: d8ce782270 (このIDを非表示/違反報告)
星乃(プロフ) - 地雷屋さん» コメントありがとうございます。ネタバレではないので大丈夫ですよ◎才能とかはないのですが、そう言っていただけて嬉しいです、これからもよろしくお願いします (2019年2月18日 7時) (レス) id: cfcc689b43 (このIDを非表示/違反報告)
地雷屋(プロフ) - この小説本当に好きです。お話一つ一つのタイトルが集まって凄い事になってますよね。気付いた時1人で悶絶しました…作者様の才能、深く尊敬致します。このコメントがネタバレなどで問題になるようでしたら、即刻削除なさってくださいね。これからも応援しております。 (2019年2月18日 1時) (レス) id: 4668e73e56 (このIDを非表示/違反報告)
星乃(プロフ) - まぶたさん» コメントありがとうございます。忙しかったりして更新はまばらになりがちですが、気長にお待ちください〜。これからもよろしくお願いします! (2019年2月11日 7時) (レス) id: cfcc689b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星乃 | 作成日時:2019年1月12日 20時